【第3回】世界のバックパッカーに聞く!「ねえ、何の本持ってきた?」in タイ

 

旅は続く。

パタヤから長距離バスに揺られ、この旅3ヶ国目となるカンボジアへ入国した。世界遺産アンコール・ワットで有名なシェムリアップを経由し、首都プノンペンに到着。

 

 

2人目:ジャスティ(32歳/コンゴ共和国)

優しい瞳がチャーミングなジャスティ。謙虚な彼と話すと穏やかな気持ちになれる

 

「僕は今ラオスで職探しをしていて、ラオスのビザを取るためにカンボジアへ来ました。フランス語と英語、中国語が話せるので、翻訳や教師の仕事を探しています。2013年に中国へ留学し、中国語と中国文学を学びました。今年の1月末に中国を出てタイに入り、ラオス、カンボジアと来たところです。ビザがおりたらラオスで1年ほど働く予定です」

 

日本人の私にとってコンゴは遥か遠い国というイメージだが、お隣の中国へ留学していたとは! 大陸を越えて学んだこととは?

 

「僕は中学の頃から中国語が大好きで、高校大学と中国語を学び、奨学金を得て中国へ留学しました。憧れの中国・済南へ降り立ったときは、ついに夢が叶ったと思いましたね。コンゴの公用語であるフランス語と中国語は全く違いますが、僕にとっては漢字を書くことも面白かった。もちろん難しかったけれど、それ以上の喜びがあったんです。

 

アフリカ文化とヨーロッパ文化の違いに比べると、アフリカ文化とアジアの中国文化には、実はとても近いものがあります。互いに多くの繋がりがあるんです。僕はときどき、アフリカ文化と中国文化に同じ魂を感じることがあります」

 

さあ、本についても語ってもらおう。

 

持ってきた本

「1984」George Orwell 著(フランス語版)

※画像なし

 

日本語版:「一九八四年」ジョージ・オーウェル著、高橋和久訳

 

イギリス人作家ジョージ・オーウェルによるディストピア小説。指導者「ビッグ・ブラザー」により個人の思考までも監視される世界に生きる男女の、禁断の恋愛を描く。全体主義社会への風刺に満ちたこの作品は、同著者の「動物農場」とともに反全体主義のバイブルとも言われ、後の文化に多大な影響を及ぼした。

 

「この本はラオスのヴィエンチャンで出会ったフランス人旅行者から貰いました。彼はアフリカ産の短パンをはいていて、アフリカの服が好きだというので、僕の持っていたシャツをあげたんです。そしたら『スーツになった!』ととても喜んで、お礼にと。見返しページには彼からのメッセージがあります」

 

旅では人も物も予想外な動きをする。シャツが本へと化けることさえある。「一九八四年」は私も大好きな小説だ。作中に登場する「二重思考」や「二分間憎悪」など独特の造語には、ゾッとするほどのリアリティがあった。

 

「この小説は思想の統制された全体主義の社会を描いていますが、それはここカンボジアの歴史にも通じるところがあって、興味深いですね」

 

もう1冊、彼は黒い皮のカバーに包まれた本も大切に持っていた。聖書だ。彼は敬虔なクリスチャンで、旅先へも聖書を持ち歩いているという。

 

「このブックカバーは母からの贈り物なんです。聖書は特別な本で、僕にたくさんのことを教えてくれます」

 

まるで人生の辞書のようだ。教養の深いジャスティに、コンゴ文学についても教えてもらおう。

 

「コンゴで最も有名な作家はアラン・マバンクです。主に社会についての小説を書いていますね。聖書以外で一番好きな本を挙げるなら、ジャン=バプティスト・タティ・ルタール(コンゴの政治家であり詩人)の『Chroniques congolaises(コンゴの記録)』です。歴史や文化など、社会に関連した多様なエピソードが書かれています。多くの学びと発見がありました」

 

最後に、あなたにとって本や文学とは?

 

「本を読めばたくさんの発見があり、笑わせられたり、幸せな気分になることもできる。本や文学は僕の人生において、とても大切なものですね」

 

母国を遠く離れても、迷わず自分の心の声に従って生きるジャスティ。ラオスでの就職活動も、きっとうまく行くことだろう。