「漫画家デビューするには?」と聞かれてどんな方法が思い浮かぶだろうか。一般的にはコンクールへの応募や出版社へ持ち込み、プロ漫画家のアシスタントとして下積みをする、などをイメージするのでは。しかし、現在は違ったデビュー方法もあるようだ。
2019年5月に、ホワイト企業と顔だけの男(物理的にも)が登場するオカルティックラブコメディ『ホワイト会社に首ったけ』でマンガ家デビューした“羽流木(わるぎ)はない”さん。ツイッターに投稿した漫画がバズったことで、編集者から声がかかりデビューに至ったという。
今の時代、SNSが大きな影響力を持つことは知られているが、これは詳しく聞いてみたい! ということでお話を伺った。
漫画の投稿を始めたのは小説のため
―――今回のデビューにあたってのきっかけは何だったのでしょう。
実は元々、漫画より小説を書く方が好きで。小説を書く際に、情景を絵で描くと良いっていうのをどこかで聞いたことがあって。練習のつもりで2017年9月くらいから漫画を描いて、ツイッターで発表していました。今回のデビュー作の元ネタを投稿したのが2018年1月。これがバズって、編集者の目にとめてもらった感じです。
―――投稿しながら、 あわよくばデビューできたら…… という考えはあったのですか。
全くなかったです。そもそも絵が下手なので。ツイッターで友達が見て、笑ってくれれば、くらいの気持ちで描いてました。
――読者の反応というものは?
初めて投稿したときは、全然反応がなかったです。 コミケにタイムスリップするという題材で描いたときに最初にバズって、「いいね」が4万6000くらいつきましたね。フォロワー数も10人くらいだったのが、1000人くらい増えて。そのあと、今回の「ホワイト会社~」のネタ元もバズったんです。
―――実際に書籍化するにあたって、編集者からどのような形で連絡が来たのでしょう。
メールアドレスに連絡が来ました。描き続けるようアドバイスをもらって、続編を書いていったら、書籍化が決まって。最近、発売になって、本当なんだな~とやっと思えるようになりました(笑)。
社会人時代の苦い体験を糧にした
―――デビュー作品のどのあたりが編集者に評価されて、書籍化したと思いますか。
新しい感じ、独特って部分だと思います。「ブラック企業系で苦しむ漫画は多いけど、優しい感じの漫画はなかった」と編集者の方も言ってました。ブラック企業あるあるで共感を呼ぶものは多いですが、ホワイトな良い環境でエンタメを作ろうとしたことを評価いただいたのかもしれません。
―――ホワイト会社を題材にしたのは、ブラック企業へのアンチテーゼな部分も?
はい(笑)。最初に入社した会社がブラック企業だったので。残業が続いたり、人間関係も酷かった。私は新卒だったので、いじめの領域外ではありましたが、自分の親くらいの年の女性が責められて泣いたりしているのは嫌だったなぁと。あと、新卒で何も分からなかったので、教えてくださいって先輩に言ったら、「忙しすぎて今、無理です」って泣かれたりとか(苦笑)。
―――仕事と漫画の投稿を両立させるのは、やはり大変でしたか?
元々絵が下手だし、苦しいですけど、それでも描いちゃうのが創作だと思います。何か思いついたら、もったいないから描かなきゃって気持ちが強かった。デビューが決まってからは、昼に働きながら、夜は1~2 時間使って描いていました。あとは土日に予定をあまり入れずに、やりくりする感じでしたね。両立は肉体的には辛かったですが、描くのは好きなので、辛くてもしょうがないな、みたいな気持ちでやってました。
―― 一冊出して、次の作品や他のことに道は広がりそうですか。
そうですね、狙おうと思えば。こういうのを企業が求めてるんだなと、一冊出してみて見えるようになったので。あと、イラストの仕事依頼もいただけるようになりました。でも小説もやりたいので、すぐには。