フォークシンガーとして活躍する世田谷ピンポンズさん。文学への造詣も深く、小説をモチーフにした曲作りや又吉直樹さんとのコラボも行っている。そんな彼の音楽は、多くの文学好きを魅了してやまない。
フォークと文学。一見すると無関係なように思える2つが、どのように結びついているのか。インタビューを申し込むと、快諾いただいた。
待ち合わせは銀座。世田谷ピンポンズさんが敬愛する作家・上林暁ゆかりの改造社ビルの前でお願いした。夕暮れ時の銀座の街を散歩しながら、文学や音楽への想いを語ってもらった。
世田谷ピンポンズさんと文学の出会い
――世田谷ピンポンズさんは、小説家の中でも特に上林暁さんがお好きなのですよね。読まれるようになったきっかけは何だったのですか?
昔、東京の書店で働いていたのですが、『星を撒いた街』(夏葉社)が入荷したときに装丁に惹かれて、ずっと気になっていたんです。その本の撰者である山本善行さんは、京都で『善行堂』という古本屋をされていて、僕もちょうど4年前に京都に引っ越しまして。
『善行堂』にうかがったときに、いいタイミングかもしれないと思って、手に取って読んだらすごく自分にしっくり来たんですよね。自分の生活圏にある古本屋さんが選んだ、というのもより身近に感じましたね。
――上林暁さんだけでなく、文学全般に造詣が深くて、歌のモチーフにもされていますよね。いつ頃から文学に興味を持たれるようになったのでしょう?
本を読むのは昔から好きだったのですが、どちらかといえば漫画やサブカルが好きだったんです。歌をひとりで歌うようになって、あるとき酔っぱらった先輩から「お前もっと文学とか詩とか読まなきゃ駄目だよ」と言われて。
それまで太宰や芥川などのベーシックなものも全然読んでいなかったんですね。それで試しに読んでみたら面白くて、それからどんどん近代文学を読むようになりました。