【後編】今世は自分のやれることを 成宮アイコさん 「朗読詩集」出版までの道のりと、これから

※前回の記事はコチラ

 

目次

違う人生を選ぶに決まってる

ーー今回出された2冊目は、どんな人に手にとってもらいたいですか。

 

1冊目はセーフティーネットの要素もあって、同じ(生きづらい)気持ちの人の手に渡ればいいなと思ったのですが、2冊目はそれも変わってきました。

 

イベントをすると、「間違って入ってきたのかな」ってくらい今っぽい方や、バリバリ仕事をしていそうなスマートな方や、年齢性別バラバラの方が集まるので、すごく緊張することが多いのですが、でも実は人間関係で悩んでいるとか、休職中とか、本当は話すのが苦手とか、いろんな人がいろんなことを話してくれて、「私の方が他人に対して偏見を持っていたな」って反省することや気づきがいっぱいありました。

 

「私が選択肢をつくるからみんな生きるぞー」と拳をふりあげるのではなく、みんなそれぞれのままで、別々に個々の生活を続けることを一緒にやることができるって思ったんです。

 

先導したり集わなくてもいいって。大好きな栗原康さんの著書に「一丸となってバラバラに生きろ(アナキズム 一丸となってバラバラに生きろ)」ってありますが、その通りだなって思いました。

 

 

――偏見という言葉がありましたが、成宮さん自身が「生きづらい人」「不幸な人」などのイメージを貼られてしまうことは?

 

あるドキュメンタリー番組から出演依頼が来たのですが、細かい台本が送られてきたんです。もう会いたくない血縁に会いに行くとか、勝手に決められていて、速攻電話して、「ドキュメンタリーではなくドラマを作ればいいんじゃないですか?」って断りました。

 

不幸な話を取り上げて、体裁の良いエンディングでキラキラさせて、「不登校時代があったから今があるんだね」って言われても全然よくない。

 

もし当時に戻って、どっちの人生にするかって言ったら、絶対違う方を選びます。楽しく学校に通って、普通の日々を送るほうがいいに決まってる。でもそれができなかった。結果として今していることにも幸せはちゃんとあるけれど、「だからよかった」ではないんです。

 

ライブに来てくれる人は、私が不幸であることを望まないでいてくれます。(活躍する姿を見ても)「成宮さんは昔とは違うから、もう大丈夫だね」とか言わない。

 

人はみんな同じで、大丈夫なときも大丈夫じゃないときも両方あるままだということを知っていてくれるんです。本当にありがたいです。

 

 

「あの時の私」を見てくれた人が、支援者に

 

ーー作品からはどれも情景が浮かびます、本から映画化になったら素敵ですね。

 

考えたことなかったです (笑)。でも今度、イトーヨーカドー丸大新潟店でライブをやることになったんです。お店を挙げてポスターを貼ったり館内放送をしてくださっていて。すごいビックリしたんですけど、応援してくれる理由を聞いたらもっとビックリして……。

 

店長さんにライブの企画を持って行ったんですけど、私が前にイトーヨーカドーのベンチで地元のテレビの取材を受けていたのを覚えていて、本社に掛け合ってくださったので実現できたんです。

 

それで新潟の新聞社の方が、イベントが決まった理由を店長さんに取材してくださったんですが、実はイトーヨーカドー丸大新潟を運営する社長さんはもう何十年も働いていた方で、以前は店長さんをされていたそうなんです。

 

ライブの企画を聞いたときに、「そういえば昔、あのベンチにずっと座ってる子がいたのを覚えてる」って。その方、私がいた当時の店長さんだったんです。

 

それで、お店を挙げて応援しましょうってなったと聞いて、「あのときの私、ちゃんと他人から見えてたんだ」って号泣しました。

 

 

ーーそんな奇跡的なエピソードがあったのですね! すごいです。

 

この本を出してから、2大ビックリしたことがあるんです。ひとつは今の話。もうひとつはある配信者の女の子の話です。

 

「伝説になるんだ」と飛び降り配信をした子なんですが、私はそれを見てしまって、なんか、その言葉と姿がずっと忘れられなかったんです。「伝説にならないで」はその子について書いてるんですね。

 

詩集が出る前にそのことをコラムに書いたら、読んでくれた方から「これって〇〇ちゃんのこと?」って言われて。実はその子の家族と友達だったらしくて、すぐ思い当たったって。

 

その後、大阪の飛田新地でライブをしたときに、ある男性の方が「伝説にならないで」を真剣にうなずきながら聞いてくれて。ライブ後に話したら、その子の親族の方だったんです。読んでくれた方がライブがあることを紹介してくれて、実際に来てくださって。

 

私は泣くしかできなかったんですが、勝手に書いたわたしの詩に、何度も「ありがとう」って言ってくださって、言葉がこんな回収をされることがあるんだって驚きましたね。

 

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