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銀座をしばし散歩した後、世田谷ピンポンズさんと取材陣は路地裏へ向かった。銀座という場所で、文学好きのピンポンズさんをお迎えするなら、向かう先は一つしかない。この街の文学スポットの代名詞である「バー ルパン」である。お酒を飲み、歴史が醸し出す雰囲気を感じながら、インタビューの続きをさせていただいた。
言葉を伝えるための歌
――ピンポンズさんの作曲スタイルについて聞かせてください。曲を作るときは歌詞が先ですか? 曲が先ですか?
言葉が先ですね。何か一節思いついたらギターを触って、何となく歌をつけてみて、語感やメロディーがうまく合ったらそれに続けてまた書いて……という感じです。メロディーから出ることはほとんどなくて、言葉を伝えるための歌という形です。
もともと小説や漫画が好きなこともありますし、コピーライターの講座に通っていたこともあって。言葉がすごく好きなんですよ。昔から好きになるものはみんな言葉から入ることが多かったので。
――歌詞を思いつく原動力になるものは何かありますか?
本や映画から刺激を受けることもありますし、自分の個人的な出来事がきっかけになることもあります。経験や体験がベースになることが多いので、そういう意味では私小説的な作り方なのかもしれません。
――先ほど、私小説とフォークは近しい、というお話がありましたものね。フォークの一番の魅力はなんだと思いますか?
シンプルに自分が思っていることを表現できるところですかね。音楽のジャンルの中で、自分に一番身近だったんですよね。洗練されていない、粗いところもあると言いますか。ものすごく不幸ではない、些細なことだけどそれなりに苦しいことってあるじゃないですか。それを吐き出せるものだと思っています。恥ずかしいようなことでも、歌だから言える。そういう魅力がありますね。
「よくフォークみたいな流行らないものを好きでやってるね」なんて言われたこともありますが(笑)。最近は少しずつフォークもまた脚光を浴びるようになってきたので、もっと盛り上がっていけたらいいなと思っています。
又吉直樹さんとの関係
――ピンポンズさんは又吉直樹さんともコラボされていますよね。出会ったきっかけを教えてください。
3年前に、又吉さんのWEBマガジンで対談させてもらったのがきっかけですね。僕がちょうど新曲を出したタイミングで、届くかどうかはわからないと思いながらもCDを送ったんですね。
そしたら、又吉さんは前に僕のCDを買ってくださっていて、僕のことをご存じだったみたいなんです。気に入った歌詞を携帯電話に沢山メモしてくださっていて。そこへ、僕の送ったCDが届いたということで対談に呼んでもらいまして、そこからの付き合いです。
対談でお会いした後は、又吉さんがWEBマガジンで架空のミュージシャンの詩を連載していたんですけど、それに曲をつけさせてもらったり、又吉さんのライブにも出させてもらったりという中で、今でも飲みに行くような関係が続いています。
――それはすごい! 又吉さんのような方に知ってもらえていたことは、とても嬉しいことなのでは?
すごく嬉しかったです。自分がずっと好きだった人ですし、自分の感覚と近いものを感じた人だったので。音楽の趣味も似ているんですよね。一番共感するところが多い人です。もともと哀愁のある笑いが好きだったので、又吉さんの笑いや書くものにすごく惹かれました。「この人は僕の待ち望んでいた人だ!」と思いましたね(笑)。
――今後、又吉さんと何かやってみたいことはありますか?
また歌で何かやってみたいという気持ちもありますし、あとはコントもやってみたいですね(笑)。