【前編】文学好きに愛されるフォークシンガー・世田谷ピンポンズさんの魅力

目次

 

上林暁が音楽をやっていたら、フォークシンガーだったかもしれない

――文学のどんなところに惹かれたんでしょうか?

 

特に私小説が好きなのですが、小説にしなくてもいいような些細なことを書いているのがいいんですよね。生活に根付いた話が多いし、あんまり派手じゃないけど着実な感じというか、悪く言えばチマチマしているところがすごく好きで。「どんなことでも書いていいんだ。歌っていいんだ」と思わせてくれます。気楽な気持ちになれるといいますか。

 

 

――それはフォークにも通じるところが?

 

そうですね、上林暁や太宰治など、そのあたりの時代の作家にはフォークを感じますね。僕は、もし上林暁が音楽をやっていたら、フォークシンガーだったんじゃないかなって思っているんですよ。

 

僕らの時代にはギターを持って歌うという形があるけど、昔はそれが文学だったわけじゃないですか。親のすねをかじったり、今で言ったらバイトしながらやっているそういう感じが文学だったから。根は同じなんじゃないかと思うんですよね。

 

だからもし逆に僕がその時代に生きていたら、文学をやっていたかもしれないです。

 

 

フォークは古本や文学と相性がいい

――世田谷ピンポンズさんは、よく本屋でライブをされています。そこに対して何か思いがあれば教えてください。

 

アコギ1本なので、ライブハウスである必要はなくて、何処ででもできるんですよね。僕の歌を聴いて下さっている方には本好きが多いし、本屋さんでやるのは自分としても好きです。雰囲気もいいんですよね。

 

最近はオファーをいただくときに「うち本屋じゃないんですけど大丈夫ですか?」って聞かれることさえあります(笑) それくらい本屋さんでライブをやらせていただいているってことですかね。

 

本屋さんでのライブは選択肢のひとつであって、そこでしかやらないというこだわりがあるわけではありません。でも自分の歌やスタイルに合ってると思っています。普段あまり騒いじゃいけないところで騒ぐのも気持ちいいですよ(笑)

 

 

――ファンの方も、やはり本好きが多いのですか?

 

それは実感としてありますね。お客さんと話していて感じます。たぶん古本や文学とフォークの相性がいいんでしょうね。音楽のなかで一番相性がいいんじゃないかと思います。

 

本屋でイベントをやったときにお客さんに「好きな本はありますか?」と聞かれて答えたら、その場でその本を買ってくれたり、そんなきっかけになるのも嬉しいですね。

 

 

――本好きのフォークシンガーとして、文学と音楽という、異なるジャンルを繋ぐ存在になりたいという意識はありますか?

 

小説をモチーフとして曲を書くこともありますが、その小説を読んでもらいたいというよりは、むしろ自分が読んで感銘を受けたことを書くことが多いので、そこまで繋ぐという意識は実はないんです。

 

でも、曲を聴いてその小説が読みたくなったと言われるのは嬉しいですね。外から見ればきっと繋ごうとしているようにも見えるだろうし、もちろん繋がったらいいなと思います。「歌う古書」とまで言われたこともあって(笑)。担うというほどおこがましいことを言うつもりはないですが、何かのきっかけになったらと思います。(取材・文 ナガイミユ)

 

後編に続く

※世田谷ピンポンズさんの活動情報については公式サイトをご覧ください!

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