【第3回】世界のバックパッカーに聞く!「ねえ、何の本持ってきた?」in タイ/カンボジア/ベトナム

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旅もいよいよ最後の国へ。

カンボジアに別れを告げ、長距離バスでベトナムへ入国。作家・開高健がベトナム戦争を取材中、拠点にしていたというホーチミンのマジェスティック・ホテルは、現在も華麗な佇まい。貧乏旅行中の筆者は、残念ながら中へ入る勇気がなかった。

 

ホーチミンのサイゴン駅から寝台列車に33時間揺られ、首都ハノイを目指す。二等車の3段ベッドは、腰掛けると頭がぶつかる高さ。

 

ついに旅の最終目的地、ハノイへ到着! 旧市街と呼ばれるエリアの安宿に1週間ほど滞在し、バックパッカーへ最後のインタビューを行なった。

 

 

3人目:シャニーナ(41歳/アルゼンチン・ネウケン)

美意識の高い彼女は写真NGだったため絵を描いた。見惚れる程の美貌をお伝えできないのが残念!

 

「アルゼンチンからニューヨークに引っ越して、不動産の仕事をしていたのですが、2年の休暇をとって旅に出ました。世界の七不思議を見たかったんです。1年旅したところですが、もう全ての場所に行きましたよ」

 

私にはそれが必要だったと、シャニーナは語る。

 

「未来に何が起こるかわからないけれど、今は世界を見たいと思ったんです。鞄一つで、ハイヒールも履かず、ノーメイクの一人旅をしたいと思いました。メキシコからスタートして、南アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジアなど様々な大陸を訪れました。次はベトナムのカットバ島へ行く予定です」

 

バックパッカーはやはり20代が大半で、40代の一人旅はけして多くはない。

 

「何かをするのに、若くなければ難しいと言う人は多いですが、それは真実じゃないですし、私は信じません。長い間働かないことに罪悪感はありましたけどね。若者と私とでは、旅の意味が違います。若者は何をするか、どこに住むかなど、求めるものがまだ定まっていませんが、私は自分の求めるものを知っていますから」

 

同世代の女性として聞きたいことは沢山あるが、本に話を移そう。

 

持ってきた本

「Here, There and Everywhere」Sudha Murthy 著

※日本語版なし

 

インドの工学教師、スダ・ムルティによるエッセイ集。孤児院の設立や農村開発などに尽力した彼女の著作は、テレビドラマ化もされている。「物乞いが教えてくれたこと」「100人の子の母とならんことを」など、22編を収録。

 

「この本はバンコクの空港で買いました。私はいつも空港で本を何冊か買うんです。人生について書かれているので選びました。パートナーのことや、信念についてです。半分以上読んだところですが、いい本ですね。英語を勉強中なので、知らない単語にアンダーラインを引きながら読んでいます」

 

アルゼンチンではどのような本が人気なのだろう?

 

「私の好きな作家はベルナルド・スタマテアス(心理セラピスト。ベストセラー「心に毒を持つ人たち」は日本でも出版されている)ですね。人間関係について書いています。私は仕事柄、人と関わるので役に立ちます」

 

常識的な生き方にとらわれず、世界中を自由に旅するシャニーナ。彼女の人生哲学は、どうやって生まれたのだろう?

 

「たくさんの本から学びました。最近ではミシェル・オバマ(元アメリカ合衆国のファーストレディ)の本です。彼女の人生には困難なこともありましたが、彼女は『大丈夫、気にせずいくわ』と。私はそういう女性が好きなんです。その本は厚くて持ち運べなかったので、オーディオブックで聴きました。私はジムではオーディオブックで、耳からも読むんです」

 

そんな彼女にとって本や文学とは?

 

「友達以上の『先生』ですね。私は本によって心を開き、沢山の恩恵を受けました。読書が大好きです」

 

白い歯がまぶしいシャニーナの笑顔は、生きて学ぶことの喜びに内側から輝いていた。

 

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