『総理の夫』を女性目線で読んだら、女性が活躍しづらい日本の現状が見えてきた

ふらっと立ち寄った本屋さんで、妙に引っかかる題名の小説を見かけました。『総理の夫』です。この4文字を見たときの、違和感の正体はなんなのか、しばらく考えて気づきました。総理の夫、つまりこの小説の中の総理は女性ということ。「総理大臣は男性が務めるもの」だと無意識に思い込んでいたため、違和感が生まれたのです。

 

 

『総理の夫』著・原田マハ

相馬凛子(そうま・りんこ)は42歳の若さで第111代総理大臣に選出された。鳥類学者の夫・日和(ひより)は、「ファースト・ジェントルマン」として妻を支えることを決意。税制、原発、社会福祉。混迷の状況下、相馬内閣は高く支持されるが、陰謀を企てる者が現れ……。凛子の理想は実現するのか!?

 

今年9月に実写映画も公開され、注目されている『総理の夫』。実際に読んでみると、フィクションでありながら、日本の女性進出の遅れに対して皮肉が込められていると強く感じました。

 

今年3月に世界経済フォーラムが発表した、世界各国の男女格差を測るジェンターギャップ指数によると、日本は156ヵ国中120位。これは「経済」「教育」「健康」「政治」の4つの項目の点数で順位付けられたものです。「政治」にいたっては147位で、その理由として国会議員の女性割合が9.9%という結果が影響していると考えられます。

 

『総理の夫』のヒロイン・相馬凛子が所信表明で示した指針の1つに、「少子化・雇用・経済の活性化を同一のものとした改善策の実施」があります。

 

 

少子化と雇用の問題は、日本の国力倍強のためにも解決しなければなるまい。非正規雇用の若者たちが不安定な収入のために家庭を持つことをあきらめ、社会に進出した女性が職を失うことを恐れて子育てをためらう。安定した雇用創出と、安定した子育てできる社会環境の整備は急務である。(『総理の夫』より)

 

本作が執筆されたのは2011~2013年。それから約10年が経った今でも、先のデータを見る限り、この問題はあまり改善が見られないように見えます。

 

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