本好きにとって天国?地獄?図書館司書として働くことのリアル

 

図書館司書に、どのようなイメージをお持ちだろうか? もしかすると、勤務中にのんびり本を読めるような職業だと思われているかもしれない。しかしそんなことは全くなく、はっきり言ってしまえば、司書として働くことはなかなか大変である。

 

まず、公共図書館では力仕事が多い。返却された本を棚に戻す、本をコンテナに詰めほかの図書館へ送る、逆に送られてきた本を棚に戻す、そういった作業をこなさなければならない。ご存知の通り本は物理的に重く、体力を要する。都内の大きな公共図書館となれば扱う本の量も多く、図書館間を行き来するコンテナの数は数十箱になることも。

 

また、図書館での求人は非正規雇用が圧倒的に多く、司書として正規雇用のポストに就くことは難しい実情がある。待遇も良いとは言えないことが多い。以下、学生向けの進学情報サイトにある、図書館司書の待遇についての抜粋である。

 

 

非正規職員の場合は時給×勤務時間の計算になることがほとんど。時給にして850~1200円程度、月給制の場合は18~20万円あたりが主流のようです。(「スタディサプリ進路」より)

 

私自身は約5年間、司書として公共図書館に勤務したが、非正規雇用から抜け出すことができずに、結局は他業種へ転職をした。この記事では、私の経験と現役司書へのインタビューを通じて、図書館司書という仕事の現実を紹介したい。

 

目次

面接すら進めない?正規雇用への高いハードル

 

まずは私自身の経歴を紹介したい。初めて図書館で働いたのは、公共図書館から業務委託を受けている民間会社でのアルバイトだ。当時は司書の資格も持っておらず、文字通りただのアルバイトであった。

 

次の年には、司書資格を約2か月の夏季集中講座で取得。それを機に、公共図書館の職員としてフルタイムで働くことになった。ここでも所属は業務委託を受けている会社で、雇用形態は契約職員である。給与は時給1000円程度、ボーナス・退職金はなし、有給休暇が与えられていることすら周知されていなかった。今にして思えばブラックな職場以外の何物でもない。

 

それから幾つかの変転があった後、公共図書館の業務受託をしているNPO法人に、現場の管理職として採用された。非正規の契約職員であったが、管理職手当が付くこともあり、待遇面では少し安定した。業務も本の貸し出し・返却などの手続きを行うカウンター業務から、図書館で購入する本の選書、読書会などのイベント開催、Twitterやホームページを通じた広報業務と広がり、裁量もずっと大きくなった。

 

だがボーナス・退職金もない一年契約の非正規雇用に変わりはない。働きながら、全国のさまざまな館種の正規職員の求人に応募した。しかし、面接まで進めない。データを見ると、公共図書館では専任・兼任職員の職員は1万959人であるのに対し、非常勤や臨時、委託・派遣といった雇用形態の職員は30万5806人(日本図書館協会「公共図書館集計2019」より)となっている。前者が正規、後者が非正規と考えると、正規になるのは非常に狭き門ということが窺える。

 

私の経歴を見てお気づきかもしれないが、いずれも図書館からの直接雇用でなく、業務委託を受けている企業・団体に雇用され、図書館に派遣されていた。契約期間が来て、更新されなければそこで終了、というわけなのだ。結局、将来のことを考え、34歳で異業界へ転職を決意することになった。

 

振り返ると、仕事自体は充実していたが、雇用面の不安のほか、待遇面でも辛酸を舐めたと感じるのが本音だ。単純にお金のことだけを考えるのならば、図書館司書として働くのはコストパフォーマンスが悪い。求められる条件やスキル、働く労力に対して、待遇面での見返りが少ないように感じている。

 

では、現役で働いている司書たちは、仕事や図書館業界のことをどのように考えているのだろうか。

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