本好きにとって天国?地獄?図書館司書として働くことのリアル

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ほかの業界や仕事も20代で見ておくこと」大学図書館勤務 後藤 博子(仮名)さん

 

ーー司書としてのキャリアを教えてください。

 

大学4年間で唯一取った資格が司書だったので、生かしたい気持があり、地元にある町立図書館に臨時職員として雇われたのがキャリアのスタートです。その後、ご縁があって大学図書館の正規職員として働いています。多くの司書が非正規雇用のなか、正規雇用になれたことは大きく、次の年もここで働けているだろうという安心感はありますね。

 

 

ーー正規雇用になれた安心感は、やはり大きいのですね。では苦労していることはありますか?

 

図書館司書の価値を、親組織の人たち、人事の人たちにわかってもらえないですね。司書自体がアピールしにくい職業なのかなと。私も司書の良さについて語ってほしいと言われても、すぐには言えないと思います。

 

 

ーー評価が難しい職業ゆえの苦労ですね。では司書の価値を認めてもらうために、どんなことが必要だと思いますか?

 

図書館司書がいたから、大学の先生や学生が「こういうことができた」と言ってくれるような存在になっていく必要がありますね。

 

以前、図書館にある本を購入したいという先生が来館されたときのことです。その本はもう絶版で、新刊書店では手に入らない本だったので、「日本の古本屋」という古書検索サイトをお伝えしたところ、「手に入った」とお礼の連絡をいただいたことがあります。また、その先生が関心を持っている人物の資料がある記念館を調べて、紹介して喜ばれたこともありました。そういったコンシェルジュのようなサービスも必要かなと。

 

あとは健康支援サービスの動きもありますよね。公共図書館って色んな医療本を置いているけど、これは「医学的に信用していい本ですよ」っていう、その目利きみたいな人がいるといいなと思います。

 

 

ーー図書館で働きたい若い人に向けてメッセージをお願いします。

 

図書館で働きたい、正規を目指したいという信念は大事ですが、待遇に満足できなかったり、正規雇用になれなかったりすることもあると思うので、ほかにこんな仕事もあるということも20代のうちに知っておいた方がいい。公務員の講座を受けるとか、違う業界に就職してみるとか、ご縁があった職場で数年働いてみるとか、そういったことが大事かなと思います。

 

最後に

ここまで私の図書館司書としてのキャリアと現役司書へのインタビューを紹介してきた。司書の仕事の大変な部分、さらに現在の図書館業界が抱えている問題の一端も見えてきたのではないだろうか?

 

図書館で働くことは、なかなか大変である。私自身、図書館で非正規雇用として働いてきた経験からもそう感じている。一方で、課題が多いということは、改善する余地も十分にあるということ。業界関係者が声を上げていき、働きやすい環境が整備されていくことに期待したい。

 

この記事を通して、図書館司書という仕事の実状に少しでも関心を持ち、理解を深めていただくことができれば幸いである。(取材・文 辻大樹)

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