東京・赤坂に“おもしろい本屋”があるらしい。その名は「双子のライオン堂」。著名人による選書、数々の読書会、本屋になりたい人のための勉強会、文芸誌の発行……これらすべて、双子のライオン堂が実践していることなのだそう。
明らかにこれまでの本屋の常識を超えている。そこからひしひしと感じられる本への愛。これは、出版と文学への偏愛を標榜する「月に吠える」として、取材せずにはいられない。
とはいえ、ただ取材するだけではつまらない。そこで、筆者は双子のライオン堂を訪問。出迎えてくれた店主の竹田信弥さんに、思い切って交渉してみた。
筆者「双子のライオン堂の、1日スタッフ体験をさせてもらえませんか?」
竹田さん「面白いですね、ぜひ!」
このとんでもない提案を、店主の竹田さんは快諾してくださった。かくして6月某日、この個性派書店の核心に迫るため、筆者は双子のライオン堂に潜入することになったのだった。
【15:00】本屋の仕事は体全体を使う
開店時間である15時に出勤。青い本の表紙をかたどったドアをあけ、店内に入る。店内は土足禁止なので、まるで友だちの家にお邪魔するような感覚だ。
5坪ほどの店内には、床から天井までぎっしりと本が並べられている。このうち約8割が新刊で、全体の約6割が作家や批評家などによる選書だという。木製の書棚が、温かみと明るさを感じさせる。
筆者「今日はよろしくお願いします! どんなことでもやりますので」
竹田さん「こちらこそよろしくお願いします!」
筆者「早速働きますよ。何からしましょう?」
竹田さん「うーん、どうしようかな……ごめんなさいね、ちょっとバタバタしていて……」
何やらあわただしい様子の竹田さん。実はこの日、開店直後から読書会があり、さっそく5、6人のお客さんが集まっていた。
竹田さんもその準備に追われている。ここは活躍のチャンスだ。
筆者「じゃあ開店準備しておきますね、任せてください!」
まずは看板を外に出す。そして、店内を掃除していく。あの、ハタキを持ってパタパタとする作業だ。書棚が多いため、ハタキがけも一苦労である。
床掃除もやった。
続いてイベントのお知らせポスターの掲示。奥のギャラリーで翌週「ブックエンド展」を開催するとのことだ。本への愛着は本グッズへの愛着とも直結している。
本屋さんの仕事は肉体労働が多いと聞いていたが、手先を動かす作業から背伸びをする作業まであり、体全体を使って働くのだと感じさせられた。