ブラック企業から身を守る手段
イベントの最後に行われた質疑応答では、就活を意識した若者から多くの質問があった。
まず「ホワイト企業を探す方法」を聞かれ、今野さんは一つの目安として、経産省による「ホワイト企業リスト」と厚労省の「若者応援企業」を挙げたが、両者とも信憑性には欠けているとのこと。結局、ブラック企業を一見にして見破る方法はなかなかないということであった。
横田さんは、「就職四季報」に掲載されている、3年以内の離職率が参考になると語る。ただし、本社と子会社の連結表記の場合、本社の離職率は低くても、子会社は酷い数字になっていることもあるそうだ。また、後にトラブルがあったときのために、就活中から説明会や面接の内容を録音しておくことを勧めた。
最後に「今後ブラック企業は減るのか、増えるのか?」という質問に、今野さんはブラック企業が一つのビジネスモデルとして成り立ってしまっているとし、減っていくことは無いのでは、と結論づけた。
「生産性や付加価値から遠ざかり、過重労働で犠牲を出しながら利益を出す方法がどんどん増えていっている。また脱法行為も巧妙になっている。こういったことを社会全体がしっかり認識しなければ、ブラック企業が減ることはないと思いますね」
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社会問題を解決するためには、世間に広く認識されることが不可欠だ。横田さんやPOSSEの奮闘がなければ、ブラック企業は都市伝説のように、実体の分からない存在として、社会にのさばり続けていた可能性もある。その実態を調査・研究し、世の中に訴えるジャーナリズムがあって、ようやく社会問題として顕在化するのだ。
今回のイベントでは、ブラック企業とジャーナリズムというタイトルの通り、社会の現状とそれを変える手段とが語られた。若者たちが今後生きていく上で、一つの指針を得られた重要な日となったに違いない。(取材・文 小野たかひろ)