芥川龍之介も悩まされた片頭痛の前兆症状「閃輝暗点」ってどんなもの?—小説『歯車』から読み解くー
ですが、芥川はこの「閃輝暗点」の症状を幻覚だと勘違いし、自分が発狂してしまったのではないかという不安を抱えていました。
〈眼科の医者はこの錯覚(?)の為に度々僕に節煙を命じた。〉
ともあるように、かかりつけの医者からも「閃輝暗点」についてきちんとした説明をされていなかったようです。
もちろん、芥川はほかにも神経衰弱、腸カタル、胃潰瘍などの病気をかかえながら苦悩に満ちた日々を送っていましたが、この「閃輝暗点」の症状も、彼を自殺に追い込んだひとつの原因になっていたのかもしれません。
また、片頭痛持ちの人は五感の働きがとても鋭いため、ふつうの人が気付かないようなちょっとした環境の変化にもすぐさま体が反応してしまうと言われています。
〈妙なこともありますね。××さんの屋敷には昼間でも幽霊が出るつて云ふんですが。(中略)尤もつとも天気の善い日には出ないさうです。一番多いのは雨のふる日だつて云ふんですが。〉
ともあるように、片頭痛持ちの人は天候の変化にとても敏感なため、雨がふる日やその直前に頭痛の症状が出る人がとても多いようです。
芥川以外にも、有名な作家ではトルストイ、ルイス・キャロル、樋口一葉なども片頭痛を持っていたとされているため、「片頭痛持ちは天才肌なのではないか」という一説もあります。
ですが、これは医学的裏付けがあるわけではなく、片頭痛持ちの人は環境の変化に敏感であることと、症状に常日頃悩まされていることから、感受性が強くなって芸術方面に才能をいかしやすいためではないかと言われています。
片頭痛に悩んでいる方は、そのつらく苦しい経験によってつちかわれた感性をいかして芸術世界に足を踏み入れてみたら、もしかしたら芥川のように素晴らしい作品をたくさんうみだす作家になれるかもしれませんね。(文・こーのまな)
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