”ぽいね”と言われ目眩がした【西荻窪】

東京には「○○銀座」と呼ばれる商店街が96か所もあり、西荻窪もその一例だ。組合はハロー西荻や手仕事市などのイベントも盛んに行っている。大型スーパーに引けを取らない八百屋も、肉屋も、文房具屋もあって、店頭に並ぶ茹でトウモロコシがさりげなく私たちの手ぐすねを引く。成功している商店街はやっぱり違うな~と思う。

 

文化人と呼ばれる人たちも多く住んでいるらしく、ほむほむ(穂村弘)や庵野秀明さんが普通に歩いている。サインや握手を求められている様子もない。出そうと思って出せていないほむほむへの手紙が、いつか私の覚悟が決まって届けられる日が来るのだろうか。

 

西荻北銀座には「なんでもリサイクルショップ・ジェット」という店がある。

 

 

空調がゼロなのでこれ以上お客が増えると夏の大参事は免れない。どれくらい「ゼロ」なのかというと「小学校にクーラーを設置するかどうか」の話し合いにもあっさりと満場一致が得られるくらいにゼロだ。(なので外観や詳しい場所の説明は省きます。気になる人はネットで検索してください。Google mapだと私のアップした写真がうじゃうじゃ出てきます)

 

あひるの電灯

 

ロールパンナちゃんはオカリナが吹けたはず

 

 

ジェットの営業は21:00頃から。そこらへんは日によってまちまちだ。POPEYEにも一度掲載されてしまったのに、その結果客が詰め寄せるといったことがなかったのはそのためだろう。

 

大理石のチェス

 

 

通常、人当たりの良さとキャッチ―な洗練さや無機質さに照準を絞り、等間隔にディスプレイする風習に食傷気味だったのは、その空間が編集されているからだった。その点ジェットには人が手を加えることのできない物々しさがある。

 

古道具と一括りで言ってもその出自は様々で、一応の置き場所の間取りはあるのだろうが、放り投げてみてそこに落ちたからそのままにしているような気もするし、地震があれば元に戻すのはまず不可能で、いっそ善福寺川から水を引いて来て、全部洗い流しちまいたいくらいものに溢れている。(神話で勇者ヘラクレスはゴミ屋敷をそうやって掃除したらしい、目から鱗な裏技だった)

 

そしてその並大抵でない物の間で身をくねらせて回るのはとても神経を使う。それは単にものを壊す恐れ以上に、それらめいめいの物が作られてから今日までの、異なる時間の厚みが一堂に会しているためであり、ジェット独特の佇まいが四方八方に跳ね上がってはその覇気を全身で浴びているせいだった。

 

アラスカや深海には人間の慣習的ルールから離れた悠久のものがあるらしい。が、それともまた少し違い、ここにいる時間は星を見る時間と似ている。「異なる時間の厚み」が星でいうところの「光年」と共通しているように思われるからだ。

 

ジェットを知っている人間がいなくなり、この場所も少しずつ常識から取り残されて、いつかエイリアンに掘り起こされたりすればいいのに。(取材・文・写真 あつかましいたけ)

 

ジェットはやたらと地球儀がある