【7/7】『月に吠えらんねえ』清家雪子先生インタビュー 唯一無二の近代詩ワールド舞台裏

151127tkt

 

※前回の記事はこちら

 

『月吠え』の原点?! 学生時代は友達をキャラクター化

 

―少し創作全般についてうかがいたいと思います。4巻で、「才無き女は悲しい/才高き女も悲しい」(第18話「明るみへ」)という白さんのモノローグがありますが、清家先生ご自身は、創作活動をするにあたって「才」は必要であると思いますか?

 

朔太郎さんが、書いているんですけれど「小説家は努力でなんとかなるけれど、詩人には天才でなければなれない」と言っていて。まあ、「すごいこと言うなあ~」と思ったんですけれど(笑)。そんな感じで、結構分野によって(違いが)あるのかなと思います。

 

漫画とかは、わりと努力の世界なのかな、とも思います。それか、向き・不向きレベルかなという感じがしていて。詩とか俳句のような、言葉選びに関しては、その「勘」のようなものは天性のものなんじゃないかなあと。もしかしたら、絵画もそうかもしれません。

 

少なくとも、チエコさんとかアッコさんの分野に関しては、そういうどうにもならない部分というものがあるかなと思っています。

 

 

―清家先生ご自身の経験から、才能以外に「これがあれば好きな道に向かっていける」というものがあれば聞かせていただきたいです。

 

どうだろう……でもやっぱり性格、向き・不向きだと思います。私も1回、「もう漫画は無理だな」と思っていたところから、なんとか戻ってこれたので。環境が許してくれた、ということもあったでしょうし、外部要因も結構大きいと思うんですよね。それこそ、家族がダメだって言ったら出来ませんしね。

 

 

―その、「無理だ」って思ったところから立ち直って漫画の世界に戻って来れた、というところのお話しをもう少し詳しくお聞かせいただいてもいいですか?

 

そうですね。「無理だ」って思ったっていうのは、そもそも人に漫画を見せるっていうことを全然していなくて。勝手に描いていたので。自己満足で、自分だけで描いて喜んでいたので。で、その延長で、たまたま賞をいただけたんですけど。

 

じゃあ、いざプロとして、ってなると、「人に喜んでもらえる漫画」っていうのが全然わからなくて。多分、多くのデビューした人が陥るところだと思うんですけれど、そこで「ああ~自分の漫画って人が読んでも面白くないんだなあ」って思っちゃって……そこでダメになっちゃったんです。

 

でもそこからポツポツと描いたりはしていて、人に見せたりもしていて。そうして徐々に、徐々に自信をつけてきたというか。「もしかしたら(自分の漫画で)喜んでくれる人もいるのかも」と思えてきて……まあ、(編集部からの)連絡も逃げまわっていたんですけれども(笑)。

 

 

―ええ!そうだったんですか!

 

そうなんですよ(笑)。でも、根気強くお待ちいただいたので。そこで私の気持ち的にも上向いてきたっていうところで、『秒速5センチメートル』という映画のコミカライズの話があり、「ネーム描いてみる?」と言っていただけて。

 

なので、「最初から連載」という形でした。そこでまた1から読み切りから、とかだとまた挫けたりしていたかもしれないです。わりと「お仕事」として最初から飛び込めたので、その部分は良かったなと思ってます。

 

 

―『秒速~』までにそんな経緯があったのですね。

 

そうなんですよ。10年くらい経っていたんですよ、デビューから(『秒速~』まで)。

 

 

―一人で悶々とするよりも、周りに見せて評価してもらうことが大事なのかもしれませんね。

 

そうですよね、研究方面だとわりと周りの評価を聞く機会ってありますよね。コンスタントに発表しなきゃいけないですし。漫画だとなかなかそういう機会がなくて。それに当時はネットがあっても私はPCを持っていなかったので。今の子はそういう発表する場がいっぱいありますけれども。

 

だから、多分今の子だとあまりピンと来ないかもしれないですね、その「誰にも見せられない」っていうモヤモヤは。子供の頃から、私の周りの友達は特別に漫画好きというわけでもなく。クラスにはアニメ好きな子もいたのですが、私自身はアニメは見ていなかったので、そういう子たちの話もわからなくって。

 

一人で勝手に描いてました。友達を勝手にキャラクターにしていたりとかしていましたね(笑)。もういま見ると、とんだ黒歴史なんですけれどね(笑)。

 

 

―友達の印象の擬人化、ですね(笑)。『月に吠えらんねえ』に通ずるところが見られますね。

 

そうですね(笑)。それを全然漫画読まない友達にあげたりしてました。で、「うーん……??」って言われたりしました(笑)。だから(デビュー以前は)変な経緯を辿ってましたね。

 

 

―創作活動を志す人へ何かアドバイスがあればお願いします。

 

ううん、私が「プロ漫画家」としては出来てないことが多すぎるものですから……。ページ数を守れない、とか(笑)。でも描く「場」があるというのはありがたいことで。特にいまの時代「場」というのは切り拓けばどこにでもあると思うんですよね。

 

たとえば、「どうしてもこの雑誌で!」とか、あんまりそういうことにこだわらないで出来る時代なので。それこそ最初っからプロ、じゃなくても、自分のウェブサイトで配信、とかでも出来ますしね。まずは、「いっぱい人目に触れること」が大事なのかなと思います。1回潰れかけた私としてはそう思います。自信にも繋がりますしね。

 

もちろん、反響ゼロで凹むかもしれないけれど、でもとにかくいっぱい出すこと、人目に触れることだと思います。

 

「あんな漫画を描いておきながら(笑)」清家先生のお酒事情

 

―文壇バー「月に吠える」の存在はご存知でしたか?

 

連載を始めてから知りました。「ああ、そういうところあるんだ~」って。ここ(萩原朔太郎と)関係あるのかなあとか、そういうのは気になっていました。

 

 

―ありがとうございます~~!

 

やっぱり、色々調べ物とかする時に、「月に吠える」とかで検索するじゃないですか。それで「あれっ、こんなバーがある」「文壇バーだ」って。こういうところがあるんだなあって思ってました。

 

 

―お酒は普段飲まれますか?

 

私飲めないんですよ。いっつも寝ちゃうんですよ、1杯で寝ちゃうんです(笑)。だから飲まないんです。あんな漫画を描いておきながら(笑)。

 

 

―確かに、酔いどれがいっぱい出てくる漫画ですよね(笑)

 

そうなんですよ、でもお酒も煙草もやらないっていう(笑)。だから、そういう憧れもあるんだと思いますね。ぐでんぐでんの姿を曝して生きていける人たちへの。

 

 

―それでは最後に、『月に吠えらんねえ』を現在読んでいるファンの方へ、そしてまだ読んだことがないという方へそれぞれメッセージをお願い致します。

 

読んでくださっている方は、ジェットコースターで大変ですけれども、何卒何卒お付き合いください!宜しくお願い致します。今後、ちょっとびっくりするかもしれません(笑)。
読んだことのない方は、まず読んでみて、「あっダメだ!」って思ったら無理はしなくていいです(笑) 。ただ、試し読みがネットで読めますので。そこですごい拒絶反応が起きなかったら、今出ている巻くらいまでは読んでほしいな、と思います。

 

そこでダメだったら「スミマセン」、という感じなんですけれど。先入観を持たずに、まずは読んでいただければ。多分、実際に読んでみたら思っていたものとは違うんじゃないかなと思います。人に紹介し辛い漫画とは言われますが、それこそ文学知識とかも要らないので。

 

わりと、「文学系」っていうと、「ああ、興味ないから」「読んだことないから」っていう人も多いと思うんですけれども、全然(文学関連書籍を)読んだこと無くてもいいので。まずは是非本作を読んでみてください!

 

―清家雪子先生、お忙しい中本当にありがとうございました! (取材・文 ささ山もも子)