第1部「『春琴抄』の世界」に続いて、奥泉光と夢眠ねむ(でんぱ組.inc)による第2部「文豪を楽しむ 谷崎潤一郎入門」が開催された。
好きな作家に森茉莉や芥川龍之介の名前を挙げる読書好きではあるが、根っからの文学好きというよりはミーハーな文豪ファン。積読(つんどく)の本もたくさんあるという夢眠に、奥泉が指南した気楽で画期的な読書法とは?
学生時代に同級生が男性アイドルの写真を見て騒いでいるとき、教科書を見て「大塩平八郎、格好いい♡」と萌えていたという夢眠は、「(芥川の肖像写真が)アーティスト写真みたいで格好いいから、読んでみたいなと思ったんです。夏目漱石が食べてた最中を食べて、その後に作品を読んで楽しくなったり。アイドルのファンみたいな感じですね」とミーハーな文豪ファンであることを明かした。
谷崎潤一郎の作品も、最近まで読んだことがなかったのだそう。また買ったものの、積読状態になっている本もたくさんあることを告白する。
それを受けて、奥泉は「それで十分。タイトルを見たのなら、もう読んだようなもの。読んだってことにして大丈夫です」と驚きのフォローを入れる。
奥泉「小説を読むっていうことは、頭からおしまいまで読むのではなく、その本と付き合うっていうイメージ。だからタイトルを読んだってことは、付き合いが始まっちゃっているんです」
夢眠「告白した感じですね? じゃあ私は恋多き女……」
奥泉「ちょっと気になったから本を買ったんでしょ? 本棚の背表紙を見てると、もしかするといつか気になって手に取るかもしれない。でも全部読まなくても、部分的に読めばいい。全部読まなくちゃ面白くない本は、小説とは言えません」
さらに奥泉は、夢眠が美大出身であることに触れ「絵画ってどう見る?」と質問。「最初は大体の世界観を見て、好きだったら近寄ってみて、筆の跡を見たり、下地を見たりしますね」と答えた夢眠に対し、小説もそういう風に読んだらいいんじゃないか、とアドバイスを送った。
「パーって読んだり、ある部分を丁寧に読んだり、全体を読み返したり。近寄って読むこともするし、すごく離れて俯瞰してみたり。それを繰り返していく作業が読むことだと僕は捉えているんです」というコメントに、感心した様子で聞き入る夢眠。
じゃあ、面白い小説とはどうやって出会えばいいの? という質問を奥泉にぶつけると、返ってきたのは「自分で作るもの」という返事だった。