【後編】文学館に必要なのは「ハードロック」 萩原朔美館長に聞く文学館革命

※前回の記事はコチラ

 

月に吠える展の取材を終えた取材陣は、そわそわしながら、文学館内のベンチに腰かけていた。学芸員さんによると、この後、文学館のラスボスがやってくるらしい。せっかくなのでお話を伺おうと、到着を待っていたのだ。

 

そうこうするうちにラスボス――前橋文学館館長であり、萩原朔太郎の孫である萩原朔美さんがやってきた。

 

朔美館長「ああ、ゴールデン街の! 前橋に店でも出すの?(笑)」

取材陣「いや、今日は取材です(笑)。少しだけお話しを聞かせてください!」

朔美館長「ああ、いいよ! 座んなよ!」

 

そして始まったインタビュー。朔美館長は、『月に吠える』記念展の工夫から、文学館の現状と変革に向けた取り組み、さらには前橋の町おこしへの思いなど、たっぷりと語ってくださった。

 

目次

文学館は来場者の求めに応えているか?

 

前橋文学館館長の萩原朔美さん

 

――従来の文学館の楽しみ方というと、じっくり資料を眺め、静かに味わうという印象が強かったです。しかし『月に吠える』展と『月に吠えらんねえ』展の両展示は、従来の文学館のあり方に囚われない自由な演出が印象的でした。

 

『月に吠える』展では、アニメーションや実写の映像もふんだんに活かそうと決めていたんだよね。あと『月に吠える』刊行100年記念に合わせて、「吠える」「吠えらんねえ」の同時開催ができたら面白いと思って、作者の清家雪子先生に声をかけたんだ。

 

ここでも原画だけでなく、立体物やいろいろな仕掛けを作ろうと考えてね。朔太郎像の隣に朔くんのパネルを設置したり、缶バッチを複数のパターン作成したり、萩原朔太郎記念館の屋根の上に『月に吠える』収録の「猫」のオブジェを2匹設置しようとしたりね。

 

 

――展示前の記者会見でも、「『月に吠える』を詩画集にしたいという朔太郎の意志をふまえ、ビジュアライズした展示を多く展開したい」とお話しされていましたよね。そういった工夫がとても新鮮で楽しめました。

 

でもまだまだ、これからですよね。というのも、文学館はものすごく遅れてて、このままじゃ潰れちゃう。文学館は今日本に700弱あって(※全国文学館協議会HPによると、図書館内の文庫などの付帯施設を含め663にのぼるという)、そのほとんどの入館者が激減しているの。

 

入館者の年齢が上がっているから、と言われてるけど、それだけじゃなくて、入館者が求めている像に応えていないからダメなんだと思うよ。

 

 

――入館者の求めに応えていないというのは……。

 

入館者が激減しているのに、相変らず同じ体制。ガラスケースに原稿用紙を入れて、「さあお前ら、素晴らしいものだから見ろ!」っていう上から目線。「何偉そうにやってんの?」って思うね。それじゃダメ。

 

文学館が、「人にいかに愛されるか」という展示方法を考えた方がいいんだよ。

 

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