【第2回】世界のバックパッカーに聞く!「ねえ、何の本持ってきた?」in タイ

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3人目:ミッチェル(26歳/オーストラリア・シドニー)

 

明るくユーモラスな雰囲気を持つミッチェルと話すと、筆者も思わず笑顔に。

 

「IT会社でシステム構築の仕事をしていましたが旅に出るために辞めて、 9月にオーストラリアを出発しました。まず父の結婚式へ出席するためにタイへ行ったんです」

 

えっ!「父の」結婚式?

 

「はい。父がタイ人女性と結婚したんです。6番目の奥さんです。彼女が最後になるといいんですけど(笑)。その後ミャンマーを4週間ほど旅しました。美しくて素晴らしい国でしたよ。その後またタイのバンコクへ戻ってから島へ行ったりと、ここバンコクを基点に旅しています。次はトルコへ友人に会いに行き、11月末に帰国予定です。3ヶ月の旅ですね」

 

お父さんの話が気になるが、本について聞かなければ。

 

持ってきた本

「Howl’s Moving Castle」Diana Wynne Jones

 

日本語版:「ハウルの動く城」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 著、 西村 醇子 訳

 

ファンタジーの女王として名高いイギリス人作家の代表作。スタジオジブリのアニメ映画「ハウルの動く城」の原作として知られている。魔女の呪いで老婆になってしまったソフィーと、本気で人を愛することのできない魔法使いのハウルは、力を合わせて魔女と戦うことに。魔法を解く鍵はどこ? ソフィーの運命やいかに!

 

「スタジオジブリ作品は僕にとって特別なんです。17歳のときにネットで知り合った日本人の彼女がいて、一緒に観たんですよね。別れてからもう長いですが、今でもいい友人ですよ。僕はこの作品に出てくるメリーゴーランドが好きで、この旅でその柄のタトゥーを入れたいと思っています。映画は何度か観ていたけど原作は読んだことがなかったので、持ってきました」

 

どうしてメリーゴーランドのタトゥーを?

 

「かっこいいと思ったんです。ジブリ作品が好きだし、元カノとの思い出など沢山の意味を持っています。動く城はどこへでも行けるので、人生の可能性を表わしている感じがますしね」

 

タトゥーのための読書というのは、実にユニークな動機だ。

 

「いつどこでタトゥーを入れるかはまだ決まっていません。この本は飛行機の中で1章まで読んだところなのですが、読み終わったら街でジブリのタトゥーを入れられるタトゥー・アーティストを見つけようと思っています。

 

入れたい柄への理解を深めてから決めたいんですよね。ジブリ作品には親しみを感じるんですよ。『ハウルの動く城』は一番好きな作品ですね」

 

母国ではどんな本を読むのだろうか?

 

「kobo(楽天の電子書籍リーダー)でSF作品を読んでいます。ピーター・F・ハミルトン(代表作『マインドスター・ライジング』)、スティーヴン・バクスター(代表作『ジーリー・シリーズ』)などです。時にはノンフィクションも読みますよ」

 

koboを初めて見たのだが、液晶はペーパーバックと変わらない印象だ。

 

「旅先でも普段はkoboで読んでいます。小さくて何冊もの本を携帯できるので、旅には最適ですよね」

 

同じ本をkoboで買うこともできるはずだが、なぜ紙の本を?

 

「荷造りのとき本を目にする度に、自分がこの旅で何をしたかったか思い出せるからです。koboの中にあったら忘れてしまうけど、紙の本なら『あ、読まなきゃ』と気がつくでしょう」

 

オーストラリアの本を取り巻く文化はどうだろう。

 

「家族では父以外は本を読みます。僕の周りの友人たちも読書家ですよ。オーストラリアは古い国ではありませんし他の英語圏の本を読めるので、オーストラリアの歴史的作家や国民的作家というのはあまり知りませんね」

 

あなたにとって本とは?

 

「一種の逃避です。読書中は長時間勤務のストレスなどからも逃げられますよね。何も考えず、人生と格闘せずに物語に入り込んで、自分を忘れられるんです」

 

彼の笑顔の後ろにある、何事も重く捉えすぎず軽く生きようという前向きな哲学が見えたような気がした。

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