本好きなら誰しもが一度といわず、新宿を訪れるたびに足を運ぶであろう聖地、紀伊國屋書店新宿本店。もはや、「新宿の顔」といっても過言ではないこちらの店舗だが、地味にいろいろと謎がひそんでいることに皆さんお気づきであろうか?
例えばこの時代にエレベーターガールがいたり、1階に化石屋さんがテナントを構えていたり、4階で突如エスカレーターが消えたりなどなど……気付いてるよね、ずっと前からモヤモヤしてるよね、そうにちがいない。
そこで、そんなモヤモヤを解消すべく、紀伊國屋の中の人たちに突撃取材を敢行することに! 今回ご協力いただいたのは、店長・西根徹さん、総務部課長・佐藤雄介さん、コンシェルジュ・松倉桑子さんの3名だ。
紀伊國屋の謎1 「なぜエレベーターガールがいるの?」
かつては百貨店などに当たり前のようにいたエレベーターガール。時代の移り変わりにより、今ではその姿を見る機会は少なくなっている。だが紀伊國屋新宿本店では、見目麗しいエレベーターガールたちが、その容姿に負けず劣らない美声で、日々お客さんたちのアテンドを行っている。しかし、この時代になぜだろう?
—紀伊國屋さんには、なぜこのご時世にエレベーターガールがいるんでしょうか?
佐藤さん「エレベーターガールは正式には『オペレーター』といいます。なぜいるのかというと、大勢のお客様が一度に乗りこんでしまうと危険だからです。お客様の安全を第一に考えて配置しております」
また、建物の構造上(エスカレーターが4階までしかない)、エレベーターごとに停止階が違うなど、少々複雑な動きをするらしい。それをスムーズに乗りこなすにはオペレーターが必要、とのことだ。現在は7名のオペレーターが勤務しているようである。
—エレベーターガールは、紀伊國屋の名物のような印象ですよね
佐藤さん「最近はエレベーターガールがいる場所も少ないですからね」
—人件費を考えると、削除されていく対象なのでは?
佐藤さん「でも、やっぱりお客様の安全と経費は比較できるものではないですからね」
さすが紀伊國屋書店、「お客様第一」という、すばらしい精神。今後ともぜひ、エレベーターガール文化を絶やさず後世に伝えていってほしい。
紀伊國屋の謎2 「1階の化石屋さん、買う人はいるの?」
紀伊國屋新宿本店に訪れたことがある人なら、誰もが一度は思ったのでは。「なぜ化石屋さんがあるの?」と。テナントが入るにしても、一階の一等地に、よりによって化石屋さんって。買う人は本当にいるのだろうか?
—1階にテナントを構える、あの謎の化石屋さんはいったい……
西根さん「あちらは、『東京サイエンス』さんという、化石や鉱物を販売する会社が運営している当店の売り場です。取引としては40年以上になるんじゃないでしょうか。
最初は『東京サイエンス』さんから化石や鉱物を仕入れて各店舗の店頭でフェアをしたり、展示会に一緒に出店して、『東京サイエンス』さんが化石や鉱物を、私たちが化石や鉱物の本を販売するというように、フェアやイベントでご一緒してきました。
そのような中で、たまたま1階の店に空きができたので、ご出店いただくことになりました。もう20年ぐらいになるとおもいます。ちょうど、映画の『ジュラシックパーク』が上映されたあたりですね。その後、拡張オープンしたんですけど、そしたら今度は隕石が売れたんだよね」
佐藤さん「そうなんですよ。じつは拡張オープンして2日目くらいで、ロシアで隕石が落ちたというニュースがあって、それがきっかけなのか、200万円くらいの大きな隕石をお客様に買っていただけました。
東京サイエンスの社長さんはすごく目利きの方で、テレビ東京の『なんでも鑑定団』で化石の鑑定があるときには、鑑定人として出ていらっしゃったりもするんですよ」
—なるほど。失礼ながら「買う人がいるのかな?」と思っていましたが、意外と売れるものなんですね。
佐藤さん「ひとつ売れると、お店で本が何十冊売れるよりも利益があるような商品もありますからね。単価が高いのと、競合が少ないということもあります」
西根さん「先月も売り上げがよくて、各売り場の中で一番伸び率が良かったんですよ」
確かに化石屋さんの前を通ると、いつもお客さんの姿でにぎわっている印象だ。熱心なファンにとっての聖地であり、愛され続けてきたお店なのだろう。