【ひとり出版社Vol.3】本作りという不自由さの中に価値がある『左右社』小柳学さん

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「ひとり出版社企画」第三弾。今回は、渋谷にある小規模出版社「左右社」にお邪魔した。代表の小柳学さんは、2005年に左右社を設立。10年以上に渡って哲学、小説、エッセイ、写真集など、幅広い内容の本を出版している。

 

年間で約30冊の刊行に加えてウェブ連載にも力を入れており、先日は4人の詩人たちがリレー形式で綴った連詩『地形と気象』を発売。本、ウェブを通して様々な価値観を届けてくれる左右社。設立の経緯や社員を増やした理由、今後の取り組みなどのお話を伺った。

 

目次

仲間と一緒に作る方が楽しくなってきた

 

― まずは、「左右社」の設立に至った経緯を教えて下さい。

 

大学生の時はマスコミ系への就職を希望していましたが上手くいかず、卒業後はトラックの運送会社で働きました。それから友人の縁で編集の仕事を始め、『アサヒグラフ』という雑誌に携わるように。

 

その後は新書館という出版社に10年勤め、三浦雅士さんのもとで修行しました。ずっと編集者として働いてきて、今度は一人でどれだけできるのか試したいと思い、「左右社」を立ち上げたんです。

 

 

現在、社員の方は何人いらっしゃるのでしょうか。

 

私を含めて社員は5人です。それにアルバイトが1人と、カメが2匹います。

 

 

― カ、カメがいるんですか?

 

ええ、タイトルや装丁のデザインで迷った時は、左の水槽にいるカメ吉に相談しますね。右のカメ坊はまだ見習いです。

 

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― そうなんですね! お一人で会社を立ち上げられた後、社員を増やされたのはどのような経緯があったのでしょうか。

 

社員は、設立して4年後に一人増えました。最初は一人でやりたいと思いましたが、やはり沢山の人数で本を作ったほうが面白かった。仲間と一緒にやると、本が売れたときは人数分だけ嬉しいんです。それも5人いたら×5ではなくて、嬉しさは1×2×3×4×5になります。今は、もう一度ひとりで出版社を始めたいという気持ちは全くないですね。

 

先日、新しく出来た本に著者の方からサインをもらったのですが、「本当に魅力的な人たちが集まった会社ですね」と書いていただき、嬉しくて涙が出ました。

 

 

― 御社では、どのように本を流通させていらっしゃいますか。

 

ISBN(書籍を流通させるための番号)はすぐに取れますが、取次に頼むのは大変でしたね。弊社はニッパンさん(日本出版販売)と、トーハンさんに6年ほど前からお願いしています。

 

 

― 本の企画は、何を基準にして作られているのでしょうか。

 

企画を出す際、テーマは特に決めていません。”世の中の役に立ち、読者の人生を応援する本であるかどうか”を重視しています。一人ひとりの中に企画ってなくて、僕や編集者、営業がいて、この辺(頭上)にある。話しているうちに思いつくことがありますね。企画というのは、相手の言葉にゆさぶられ、ゆさぶり返す、その関係性の中から生まれてくるものなんです。

 

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