あなたの短歌が皇室で披露される?新年に開催される「歌会始」とは

1950年頃、宮中歌会始(画像はウィキペディアより)

ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし

岡本真帆)

見覚えのある方も多いのではないでしょうか。歌人の岡本真帆さんがSNSで発信すると、人々の関心を集め、瞬く間に「いいね!」が集まりました。SNSが普及した今、自分の思いを31字で気軽に発信できる表現方法として、改めて短歌に注目が集まっています。

短歌を披露する場として歌会が開催されることがありますが、その中でも伝統的なイベント「歌会始(うたかいはじめ)」が毎年1月、新年に行われています。歌会始はどのようなものなのか、紹介していきます。

目次

鎌倉時代から行われてきた歌会始

短歌の愛好家が共通の題(あるいは自由)で歌を詠み、披講する会を「歌会」といい、奈良時代から行われてきたとされています。天皇が催す歌会を「歌御会(うたごかい)」といいます。宮中では年中行事としての歌会のほかに、毎月の月次歌会(つきなみのうたかい)が催され、天皇が年の始めに催す歌御会を「歌御会始」と呼びました。

歌会始は、鎌倉時代中期に亀山天皇の文永4年(1267年)1月15日に宮中で行われた記録があり、これが起源とされています。当初は限られた人々だけが出席できる場だったのですが、明治以降はメディアを通じて一般へも広まり、誰でも参加が可能になります。

第二次大戦後には、歌人に選歌が嘱託されるようになり、一般の人々に合わせてお題は平易なものになりました。ちなみに令和6年のお題は「和」、令和7年のお題は「夢」です。歌が選ばれた人々は式場へ参加し、天皇皇后両陛下にお目にかかることができ、選者との懇談も設けられます。テレビの中継放送も導入されるなど、歌会始ならびに短歌の裾野は一般にも広まっているのです。

明治以降の歌会始の歴史

明治7年(1874) 一般の参加が認められる
明治12年(1879) 一般の歌のうち特に優れたものを選歌とし、歌御会始で読み上げられる
明治15年(1882) 御製(天皇のつくる詩文や和歌)をはじめ選歌までが新聞に発表される
明治17年(1884) 選歌が官報に掲載されるようになる
大正15年(1926) 皇室儀制令が制定され、歌会始の式次第が定められたことから、「歌会始」と呼ばれるようになる

歌会始はこのように行われる

歌会始は、長い年月を経てその姿や形態を変えてきましたが、現在はどのように行われているのでしょうか。

① 一般から選ばれた歌
② 選者の歌
③ 召人(めしうど・歌人などのこと)の歌
④ 皇族殿下の歌
⑤ 皇后陛下の御歌
⑥ 御製(天皇陛下の歌)

このような順で歌が披露され、読師(司会役)、講師(全句を節をつけずに読む役)、発声(第一句から節を付けて歌う役)、講頌(第二句以下を発声に合わせて読む役)によって進行されます。短歌を何人もの輪唱で節をつけて輪唱する様子は、リズミカルで臨場感があるのでワクワクすること間違いなしです。実際の様子を知りたい方は、ぜひ動画をご覧ください。

短歌会メンバーに聞く歌会の魅力

歌会始や歌会の魅力について、実際に短歌を詠む人たちはどう考えているのでしょうか。北海道大学短歌会の会長であるササキカツヤさんと、辻村陽翔さんに伺いました。

 

――歌会始についてはご存じでしたか? また、歌会始への参加歴などお伺いしたいです。

ササキさん:部活動として参加したことはないのですが、(短歌界の)常識として知ってはいました。

辻村さん:歌会始は歌人が集まって短歌を詠むというよりは、高校生や趣味で短歌をたしなんでいる方など、一般の方々の参加するアットホームな会とされています。

 

――専門の方というよりも一般の方が幅広く参加されているという感じでしょうか。

辻村さん:そうですね! ただ、選者の方に大御所がいらっしゃることもあって、選歌の土台がしっかりしているという印象です。

 

――歌会は北海道大学短歌会でも実施していますか?

ササキさん:はい。月に2回、月初めと月末に実施しています。「自由詠(お題はナシ)」と、お題について詠む「題詠」の二つのジャンルがあります。作者を伏せたまま短歌を鑑賞して、「ここがいいよね」と思ったポイントを挙げたり、批評しあったりしています。歌会の最後には解題といって、それぞれの歌の作者を明かします。

 

ーーすごく面白そうですね! ちなみに、歌会の魅力はどのようなところにあると思いますか?

ササキさん:歌会の魅力は、自分の歌に対して客観的なフィードバックをもらうことができることと、同年代の人たちの歌に触れられることだと思います。ただ、他の人の主観が入ってしまうということでもあるので、自分の守りたいところは守っていく姿勢が大事ですかね。

 

――たしかに、自分の短歌について、一人では発見できない新しい視点からの解釈をもらえるのは楽しいですよね。そんな歌会に参加したいと考えている人や、これから短歌に触れたい! と考えている人におすすめの歌集はありますか?

ササキさん:笹井宏之さんの歌集「てんとろり」をおすすめしたいです。難しい言葉は使っていないのに革新的で、言葉がポップでやわらかいのにしっかりとポエジーを感じます。

辻村さん:黒瀬珂瀾さんの「黒曜宮」がおすすめですね。文体はかためですが、エヴァンゲリオンやBLなどのサブカルチャーを取り入れているところがかっこよくて、独自色があって面白いです。

 

――どちらも個性があって面白そうですね! おすすめしてくださってありがとうございます。


北海道大学短歌会のおふたりから、若者視点での短歌に対する貴重な意見を聞くことができて、歌会始、ひいては短歌についての理解をより深めることができました。

ちなみに、北海道大学短歌会は大学生であれば参加可能で、大学、学年問わず会員を募集しています。会費はゼロなので、短歌をつくりたい人も、短歌が好きな人もぜひ参加してみてください!

※興味を持った方はこちらからご連絡をお願いします!

終わりに

短歌を楽しむイベントとしての歌会始について特集しました。個人的には、鎌倉時代から続く歌会が現在でも行われていること、人々が短歌で気持ちを表現し続けていることにロマンを感じました。令和7年度のお題は「夢」で、締め切りは令和6年(2024年)9月30日。基本的にはどなたも気軽に応募できます! 皆さんもぜひ、参加してみてはいかがでしょうか?(取材・文 岡本るい)

※令和7年度の歌会始の詠進要領は以下から確認できます!

https://www.kunaicho.go.jp/event/eishin.html

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