動物園に足を運ぶと、連日多くの人で園内がにぎわっている。少年たちはライオンの檻に目を輝かせ、大人は小動物に心を休ませる。一方で多くの人は、部屋をうごめくゴキブリ、地面を蛇行するミミズには悲鳴を上げる。人はその外見だけを見て、判断をしがちだ。
昨年の11月に刊行された『LIFE人間が知らない生き方』(以下、『LIFE』と表記)は、生物の生態を通じて、人付き合いのコツや悩み事の解決策など、生活に役立つヒントを与えてくれる一冊。例えば嫌われ者の昆虫であっても、その生態から学ぶことは多い。私たちが普段蔑ろにしているものにも、重要なことは隠されているのだ。著者の一人で、主に解説を担当した篠原かをりさんに詳しくお話を聞いた。
生物が好きすぎて部屋の中を森に
――取材のために、わざわざゴールデン街までありがとうございました。いらしてみて、どのような印象を持ちましたか?
前に新宿に来たときに、髪がオレンジ色のすごく派手な集団に絡まれたことがあって、新宿は怖い街っていう印象がありました。なので、ゴールデン街も奇抜な格好だったり、怖そうな見た目だったり、ほかの街では見かけないような人がたくさんいるイメージがあったんです。
けど、実際に来てみると、(取材時が昼ということもあり)意外と整然とした街で、イメージが変わりましたね。これが夜にどうなるか気になるので、機会があれば来てみたいです。
――ゴールデン街は飲み屋街として有名です。篠原さんは昆虫食もお好きということですが、お酒に合う昆虫などありますか?
基本的にどの昆虫も揚げるとお酒に合うようになりますね。特にセミは揚げるとハイボールに合うのでおすすめです。ほかの昆虫だと、ミルワームはチョコソースをかけて食べると香ばしいパフのような食感がして、カミキリムシの幼虫はジャイアントコーンのような味がするので、スナック感覚でさくさくいけちゃいます。
普段から食べる分にはセミがおすすめですね。エビと木の実の中間のような味わいで、燻製にしたりするとかなりおいしく食べられます。エビチリのエビの代わりにセミを使ったセミチリは、本格的な中華料理の味が楽しめるのでぜひ一度食べてみてください。
――き、機会があれば……ところで篠原さんは現役大学生ですが、大学でも昆虫に関する研究をされているとか。
そうですね。大学では昆虫タンパクに関する研究をしていて、それこそ昆虫食だったりとか、さまざまな勉強をしています。でも、昆虫食ってまだまだ世間だとマイナーで、ときに批判されがちな分野なんです。
なぜなら昆虫食を行っている人のなかには、真面目に勉強に取り組んでいる人もいれば、ただ楽しんでいるだけの人もいて、そこに確執のようなものが存在しているからなんです。私も後者に見られるときがあって、それがちょっとつらいですね。
――生物がお好きということですが、興味を持ったきっかけはありますか?
物心ついたときから、ズボンのポケットいっぱいにダンゴムシを詰めていたような子どもだったから、はっきりとは覚えてなくて……父が田舎出身ということもあり、自然とは馴染みが深かったので、その影響があったのかもしれません。あとは、学校の授業とは別に昆虫についての実験をしたりする過程で、学問の対象としても興味を持っていきました。
――生物が好きすぎて、何か失敗してしまったエピソードはありますか?
中学2年生の頃、部屋のなかを森にしようとしたことですね。自分の部屋いっぱいに土を撒いて、植物を植えたら昆虫を部屋で放し飼いにできるんじゃないかと思ってやってみたんですけど、思ったよりも水捌けが悪いことに気付いたんです。だんだん部屋のなかがかび臭くなっていって、最終的には腐葉土だらけになってしまいました。