学生時代に「クマムシ」という小さな生きものに魅了され、「かわいい! すごい! めずらしい!」という超単純かつストレートな感情のおもむくまま、研究に半生を費やしてきた男、堀川大樹。「彼とクマムシ」というミクロな関係性は、徐々にマクロな世界へと発展してゆく……。
「クマムシ博士」堀川大樹さんインタビュー、後半戦スタートです!!(前編はこちら)
日本の教育システムがかかえる問題
—一冊目の『クマムシ博士の「最強生物」学講座:私が愛した生きものたち』ですが、本当におもしろくて、一気に読んでしまいました。私は中高の生物の授業が大嫌いだったのですが、学校の先生も、これくらいおもしろく授業をやってくれればよかったのに……。
ぼくも、中高のころは生物があまり好きではなかったんですよ。でも、そのあたりは教育システムの面からみたら仕方ないんです。公立校だったらとくに授業の自由度が低いし、そのなかでどれだけ工夫しておもしろい授業をしたとしても、給料はあがらない。先生のモチベーションが低くなってしまうのも当然だと思います。
予備校の講師などであれば、生徒が増えて人気が出たらそのぶん給料アップにつながるからいいんですけどね。ぼくが生物に興味を持ちはじめるようになったのも、予備校での授業がきっかけでした。
つぎは、「納豆菌」について書きます。
—5月下旬に発売された『クマムシ研究日誌』は、1冊目よりも専門的な内容なのですか?
そうですね。でもやっぱり、クマムシを知らない人や生物学についてあまり知識がない人に向けて書くようにしました。この『フィールドの生物学』というシリーズは筆者の自伝的半生について書くスタイルで、こういった専門書のなかではわりと自由なほうなんです。
ぼくの知人の研究者の小松貴さんも、このシリーズで「裏山の奇人: 野にたゆたう博物学」を書いているんです。裏山でハチやカラスと戦いながら研究をする、すごく面白い本ですよ。
—今後も執筆に力を入れていくご予定ですか?
いえ、それはないですね。ぼくはもともと文章を書くのがそこまで好きなわけではないんです。それに、本を書くとなると時間もとられてしまうので、そこまで執筆メインというかんじにはしたくない。
でも、じつは今、「納豆菌」についての本の企画が持ち上がっています。まだ詳しいことは言えませんが、楽しみにしていてください(笑)。
常識にとらわれない生き方だって、できるんだ
—研究以外のさまざまな取り組みをおこなうなかで、交友関係に広がりはありましたか?
やはり研究者が多いですけど、ブログで知り合った人は多いですね。ブログに興味をもって話しかけてくれる研究者もいます。メレ山メレ子さん(むし大好きブロガー)はブログがきっかけで知り合って、一緒にニコニコ生放送をしました。東浩紀さんもネットを介して知り合って、ゲンロンカフェでご一緒させていただきましたね。
—クマムシ博士の著書を手にとる方に、どのようなことを伝えたいですか?
クマムシについて知ってほしいという気持ちはもちろん一番にあります。あとは、ぼくみたいな生き方をしている人間もいるんだということも知ってもらいたいですね。
ぼくは十代のころからあまり真面目ではなかったので、親には早い段階であきらめられていました。クマムシ研究に手を出したころには「もう勝手にしなさい」という感じで。まわりの友達はそもそも「クマムシ? なにそれ?」みたいな反応でしたし。
それでもこうやって研究を続けられていたり、いろいろな新しいビジネスができていたりするので、「常識にとらわれない生き方だってできるんだよ」ということを伝えられたらいいと思います。
—堀川さんのような生き方をしたいという方へ、何かアドバイスはありますか?
ぼくは成功しているとは言いがたいですけど、研究者として成功したいと思っているなら、執着心と柔軟性は必要です。
あとは、勉強をするにこしたことはないとは思います。ぼく自身あまり勉強はしていなかったので、いわゆる学校で教えられているような勉強法にとらわれず、たくさんのことに興味をもってほしいですね。(取材&文 マナ・コノ)
< 取材を終えて>
博士号を持つ生物学の研究者ということで、「どんないかつい人がくるんだろう……」と少々緊張気味の筆者でしたが、文章から感じた通りのサービス精神旺盛な方でした。
「ジョジョの奇妙な冒険」がお好きとのことなので、ジョジョ立ちしていただけますか? とお願いしたところ、快く応じてくださった堀川さん。好きなキャラクターはDIOとのこと。
インタビュー後もノリノリで、『クマムシ研究日誌』の出版を記念して、文壇バー「月に吠える」での一日店長も決定しました!
『クマムシ研究日誌』出版記念! クマムシ博士一日店長
日時:7月4日(土)19~24時頃
料金:チャージ500円、ドリンク700円~
会場:プチ文壇バー「月に吠える」
東京都新宿区歌舞伎町1-1-10 新宿ゴールデン街G2通り
会場では著書の販売やサインはもちろん、ここでしか聞けない様々なお話を聞けること間違いなしです! 予約は不要ですので、どなたも気軽にお越しください。混み合ってきたら、席を譲りあっていただきますよう、よろしくお願いいたします。