美女に恋した男たちの争い、労働者が資本家に復讐…宮沢賢治のあまり知られていない作品と素顔を紹介

宮沢賢治といえばどんなイメージがあるだろうか。有名作品では『銀河鉄道の夜』や『注文の多い料理店』、『よだかの星』などが挙げられ、幻想的かつ透明感のある情景描写が印象的で、ユニークだがどこか親近感の湧くキャラクターが多く登場する。

作品から朴訥とした人柄や、温かい雰囲気を感じたり、さまざまな生き物や植物が登場することから自然を愛する人だったのではないかと想像したりする人も多いかもしれない。今回は、あまり知られていない作品や、意外な一面を紹介したい。

目次

宮沢賢治のあまり知られていない作品

土神ときつね

野原に立つ綺麗な女の樺の木には、乱暴で汚い身なりをしているが正直者の土神と、上品で賢いが不正直者のきつねという二人の友達がいた。

樺の木を喜ばせるために嘘をついて罪悪感を覚えるきつね、樺の木に対する恋心ときつねへの嫉妬に苦しむ土神。樺の木への思いは一緒であるのに、正反対な二人の悲しい結末に胸が締め付けられる短編童話。

 オツベルと象

ある日、地主のオツベルのもとに一匹の白い象がやってきた。ズル賢いオツベルは言葉巧みに象をだまし、自分のもとで働かせることに。最初のうちは楽しんでいた象だったが、過酷な労働を課せられているにも関わらず、食べ物の量はどんどん減らされていき、徐々に弱っていく。そしてある晩、小屋に倒れ込んだ象が「もう、さよなら、サンタマリア」と呟くと、それを聞いた月が助言をして……。労働者と資本家の関係を描いた社会風刺的な作品。

 ビジテリアン大祭

ある島の小さな山村で行われた、ビジテリアン大祭に日本の代表として参加した主人公。大祭が幕を開けるや否や、菜食主義者と反対派の応酬が始まるのだが、反対派のある意見を聞いて怒った主人公は壇上に立ち、口を開く。難しい言葉が多いため賢治の童話の中ではかなり浮いているが、賢治のユーモアや思想が感じられる作品だ。


賢治がこのような作品を書いていたと、驚いた人もいたのではないだろうか? 続いて、プライベートでの意外なエピソードも紹介していきたい。 

宮沢賢治の意外なエピソード

ベジタリアンになろうとした

18 歳のときに法華経の説話を読み、深い感銘を受けて以来、熱心に法華経を信仰していた 賢治は、動物を食べるのは可哀想だと思うようになった。そして21歳のとき、友人に宛てた手紙で、ベジタリアンになることを宣言する。

『ビジテリアン大祭』はそのときに書かれたものであり、それから5年間は菜食生活を続けたのだが、つい肉食の誘惑に負けてしまい、「今日私はマグロを数切れ食べてしまいました」などの報告を友人に送り続けていた。

 音楽にも精通

レコード収集が趣味であった賢治は、頻繁にレコードを買っていた。そのため行きつけの楽器店は、地方の店であるのに新しいレコードが多く売れるとして、イギリスのレコード会社から感謝状を贈られたそうだ。

また、賢治は自ら楽曲制作を手掛けており、作詞あるいは作曲した曲は全部で二十数曲に及ぶ。そのなかのひとつである「星めぐりの歌」は、『双子の星』にて歌詞が用いられるほか、『銀河鉄道の夜』にも登場する。

 春画コレクターだった

禁欲主義でも知られるが、一方では春画コレクターでもあり、同僚の教諭と春画を批評することもあったらしい。過激な内容であるが故に原書が発行されたイギリスでは発売禁止処分となった『性の心理』という翻訳書をなんとか入手した賢治だが、伏せ字になっていた部分が気になり、わざわざ仙台の本屋まで行って原書を読んで確かめたそうだ。

また、この本が友人に見つかったとき、「農学校の教え子たちが性で間違いを起こさないように教えたいと思って」と言い訳をしたり、「猥談は大人の童話みたいなもので、頭を休めるものだ。猥談でも性質の悪いものもあるけれども、そうでもないものは、誰を憎みたいという訳でもなく、人を傷つけるというものでもなく、悪いものではない」と話したりしていた。 

おわりに

宮沢賢治の意外な一面を知ってもらえただろうか? 今回は主に童話を紹介したのが、『春と修羅』をはじめとする詩では、彼自身の心情や情景が読み取れ、より等身大の宮沢賢治を見ることができる。ぜひ、これを機に宮沢賢治作品を読み返してみたり、未読の作品を読んだりして宮沢賢治の新たな魅力を再発見してほしい。(文 海月) 

おまけ(宮沢賢治の有名作品のあらすじ紹介)

銀河鉄道の夜

星祭りの夜、孤独で貧しく、いじめられっ子の少年ジョバンニは町外れにある丘で、空から降りてきた行き先の分からない汽車「銀河鉄道」に乗ってしまう。するとそこには親友のカンパネルラが乗っていた。銀河めぐりの旅を楽しむなかで二人は様々な人物に出会い、話をする。

旅の終盤、サソリの話に胸を打たれたジョバンニは、みんなの幸せのためにどこまでも一緒に行くことをカンパネルラと誓い合うのだが……。幻想的な世界観と、切ないストーリーが心に優しく残る宮沢賢治の代表作。 

注文の多い料理店

二人の若い紳士のハンターが山奥で道に迷ってしまう。歩いているうちに空腹となり、ふと後ろを見ると立派なレストラン「山猫軒」があった。二人がなかに入ると、長い廊下の途中にあるいくつもの扉に店主の注文が書いてあるのだが、その通りにしているうちに「注文」の本当の意図に気付く。生前に出版された唯一の童話集『注文の多い料理店』の表題作。

セロ弾きのゴーシュ

あまり上手でないと評判のセロ弾き、ゴーシュはいつも楽⻑からいじめられており、10日後に予定されている音楽会の練習をしているが上達は覚束ない。しかし、落ち込む彼のもとへ訪ねてきた生意気な三毛猫に怒った勢いで『印度の⻁狩』を上手に弾いてみせる。この日からさまざまな動物がゴーシュの家を訪れ、動物たちと接するうちにセロの腕が上達していく。

絵本や紙芝居、映画など、老若男女問わずさまざまな形で愛され続けている人気の童話。


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