【エピソード3】壁一面に本棚のあるゲストハウス 旅人たちそれぞれの物語

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ゲストハウスへようこそ

 

 

他の日常で広がった世界観が自分の日常に風を注ぐ感じですね。

『ゲストハウスガイド(著: 前田有佳利)』より

 

「昨日は一晩中ここでこの本を読んでたんだよね」昨日から連泊している男子の学生さんが、女の子を1人連れてきた。店内をゆっくり案内していく。友だちかな、と思ったけれど少し距離感がある。「おかえりなさい」と声をかけると、「はじめまして!」と元気にあいさつされた。2人とも大学四年生。春から同じ会社で働くそう。就職前に必要な重機の資格を取るために一泊2日で長野にやってきたという。

 

お兄さんの方は、大学一年生のときに初めてゲストハウスに泊まり、そこから魅力に取り憑かれ、国内はもちろんカンボジアなど海外でもゲストハウスを泊まり歩いているという。今回の長野滞在も迷わずゲストハウスへ。「booking.comで価格の安い順に調べてここにしたんですけど、こんな面白いところだったとは」と満足げでうれしい。

 

女の子の方は、近くのビジネスホテルに7000円ほどで泊まっているという。まぁ妥当な価格かな、と思っていたら、お兄さんが3000円の宿の泊まっていると知り、どこにそんな安い宿が!? と話すうちに今まで知らなかった「ゲストハウス」の存在を知り、「行ってみたい!」とついてきたらしい。おぉ、ゲストハウスデビュー! ようこそ。

 

「ゲストハウスってこんな感じなんですね」とキョロキョロしているので、「ひとくちにゲストハウスって言っても、宿ごとに色というか個性があるので。こういうところもあるんだ〜くらいに思ってもらえたら」と伝えておく。そういえば、ゲストハウスのガイドブックがあったな。私の行った宿に付箋が貼ってあります、よかったら、と手渡す。わぁ、ありがとうございます! と彼女が目を輝かせてページを捲り始まる。

 

そのまま3人でストーブを囲み、旅とゲストハウスの思い出を語り合った。カンボジアの2ドルのゲストハウスは、コンクリートの床にござ、扇風機があるだけだったらしい。香川のゲストハウスの洗面所であいさつを交わした女の子に会いにジョージアまで行ったこと。宿で意気投合して飲みに行った人と、次の旅先に向かうフェリーで再会したこと。夜遅くに到着したアメリカのホステルで、部屋を間違えた老夫婦が部屋でくつろいでいて、へとへとになりながら部屋を移動してもらったこと。旅にはトラブルも付き物だけど、それがこうして別の旅先で話のタネになる。

 

「わ〜、もっともっと旅の話聞いてたいけど、ストーブであったまったら眠くなっちゃった!」絶対次の旅はゲストハウス泊まってみます! と女の子が名残惜しそうに帰っていった。今日の思い出がいいきっかけになったらいいな。もしかしたらいつかどこかのゲストハウスで再会できるかも、なんて。

 

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