【後編】人への興味と好奇心 「面白いことをとことん書く」記者がタクシーに着目した理由

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これからライターに求められるもの

 

――このWEBマガジンは、ライター志望の読者も多くいます。どんな人がライターに向いていると思いますか?

 

人に対して興味のない人は難しいと思います。例えば、「月に吠える」のようなバーに行って、隣にいる人としゃべる人、しゃべらない人がいます。言い換えると、自分の内の世界を大切にする人と、外の世界を大切にする人です。

 

ライターに向いている人は、隣にいる人に話かけられる人、つまり物おじせずに誰とでも話せる人だと思います。ただ、近づくだけでなく、一定の距離を保ちながら、うまく人を観察できるバランス感覚も大事かな、と。

 

 

――まさにタクシードライバーと一緒ですね! では、これからの時代のライターに求められることは何でしょう?

 

WEBと紙媒体のライターは求められる要素が違います。まず、どちらにも共通することは、世間のニーズ、編集者のニーズを自分の中で理解して、そこに対して自分はどういったことができるか、考えて企画にできることです。今も昔も変わらず、企画を出せる人は強い。

 

では、WEBと紙媒体で何が違うのか。説明する前に、質問ですがYahoo!ニュースは見られますか?

 

 

――よく見ています。

 

現在メディアの多くは、自社の記事がYahoo!ニュースのトップに掲載されることを重視しています。今、雑誌・新聞などの紙媒体の多くは売り上げが落ちていて、その分をWEBの収益で補填する構造になっています。記事がYahoo!ニュースのトップになれば、急激にPVが増え、広告収入が入ってくるためです。そのため、各社はWEBに力を入れており、ライターの需要も多いため、紙媒体よりもハードルが低いのです。

 

ただ、間口が広くなっている一方、WEBは取材をしなくても書ける原稿が増えており、どのように自分らしさをアプローチするか、より考えなくてはなりません。テレビやSNSなどの、有名人の発言を拾った記事がよくありますよね。それをそのまま記事にするのではなく、例えば取材をするなりして新たな情報を加え、独自の記事を作っていくという視点がないと厳しいと思う。

 

そのように創意工夫していって、WEBで面白いと注目されるようになったら、紙媒体の編集者からも声がかかるかもしれません。

 

 

――栗田さんのお話を聞いていて、人への興味や独自性も必要ですが、一番は「好きなことをとことん書くこと」が大事だと感じています。

 

そうですね。でも、「これしかやらない」ではなく、自分の中で折り合いをつけていくことも大事です。僕も今は、それなりに好きなことを書けるようになってきましたが、それまでは多少気が進まない仕事でも断らず、実績や経験を積んでいくのが正しい道だと思います。

 

 

四角四面にリアリティーを追うのではなく、その中にある面白みを自分なりの方法で拾い集める。栗田さんが映画について話す中で、「エンタメとリアルの共同」という言葉が出てきたが、書き手としての栗田さんの姿勢そのものだと感じた。

 

タクシードライバーたちの悲喜こもごもが、まさにコロナ禍における業界のリアルであり、その人間らしさに惹かれて読み進めてしまう。ライターの仕事にとって大切な、「人間の面白さに対する嗅覚」を感じることのできる一冊だ。(取材・文 のどか)

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