メキシコの漁師になりたいお姉さん
悩んでる人はもっと適当に生きましょう
『ニートの歩き方(著:pha)』
都内の広告代理店で勤めているという30代のお姉さん。長野に移住した友人に会いにやってきた。週末、二泊三日の滞在。彼女は、好きな時間に起きて、ふらっと入った喫茶店でコーヒーを飲み、宿にこもりだらだら本を読んで帰っていった。
彼女が熱心に読んでいたのは、日本一有名なニート、phaさんの『ニートの歩き方』。意識高くいるのにもう疲れた、メキシコの漁師みたいに肩書きを捨てて、好きなことや得意なことでのんびり生きていきたいとぼやく。
「いつも週末のたびに仕事に行きたくないな、って思うんですよ。でもなんとか月曜日の朝起きて出社するでしょ、そしたらまた次の日、また次の日。あれだけいやだって思っていても、なんだかんだ1週間を乗り切ってしまう。怖くないですか?」と呟いていたのが印象に残っている。「帰りたくない」と、帰りの新幹線の時間ぎりぎりまで、カウンター席で本のページをめくっていた。
「帰りたくない」と言いながら帰っていくゲストさんを見送るたびに、長野で過ごしたあたたかい時間の記憶が、ふとしたときにあなたを救ってくれますように、と思いながら「いつでも帰ってきてくださいね」とお見送りする。
帰った後、「旅先でだらだらするの最高でした。やることはいつもと一緒でも、『いつもの場所じゃない』が月1で必要!」とメッセージをくれたお姉さん。肩書きを捨てきれなくても、たまには旅先で「何者でもない自分」を満喫して欲しい。
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旅に正解なんてない。旅程をつめて、観光名所を周り、名物を食べ尽くす。それも旅だ。宿や、ふらっと入った喫茶店にこもり、だらだら本を読む。それも旅。自分の部屋で読んでも響かない一節が、旅先では違って見えることもある。
旅は自分の体を遠くへ連れて行ってくれる。本を開けば心を遠くへ連れていける。旅に出ても、いつかは帰ってこないといけないし、どれだけ本に没頭しても、ページから顔を上げれば生活は続いていく。それでも人は今日も旅に出るし本を開くのだ(文・風音)。
ゲストハウス&バーPise
長野県長野市東後町2−1