前橋に朔くんがやってきた!朔太郎のふるさとで開催された『月に吠えらんねえ』原画展レポート

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着たら精神が崩壊する?ワンピース

 

 

月吠えブースを思う存分堪能したところで、「文学の過去と未来展」を見学する。注目の切り絵作家・大橋忍さんの繊細な切り絵や、球体関節人形、写真……会場にはさまざまなかたちのアートが並ぶ。

 

作品のモチーフとなる文学は、過去の名作でも、自分のオリジナルでもいい。どのような形であれ、文学に関わるものであれば出品可能なのだそう。今回の展示のために、合計26名のクリエイターの作品が集結したという。

 

会場でもひときわ目を引いたのは、トルソーに飾られたモノトーンのワンピース。可愛らしいシルエットだなと近付くと、細かな文字がびっしり。

 

 

なんとこちら、夢野久作の『ドグラ・マグラ』の一節が印刷されているのだ。なんともアバンギャルドなワンピースを作成したのは、今回の企画の主催者・はー太さん(INKlude)。これは一度見たら忘れられない、インパクト抜群のワンピースだ。しかもちゃんとかわいらしい。

 

実は、はー太さん自身も『月吠え』愛読者の一人。金沢近代文学館や、中原中也記念館では『月吠え』関連企画が行われてたにも関わらず、前橋では未だイベントが開催されたことがない。「ならばやるしかないでしょう!」と決意し、はー太さん自身で展示企画の交渉を始めたところ、清家雪子先生や関係者に快諾していただけたという。

 

また展示が『月吠え』5巻発売のタイミングと重なっていたため、カバーイラストの展示も打診したところ、そちらも快諾を得た。データを受け取った時「あぁ、もう、素敵! 素敵! みんな展示待っててね! と一人でニヤニヤしてしまった」と、はー太さんは興奮気味に振り返った。

 

 

今回の企画展について、中林さんは「『ギャラリー』や『アートの展示』というと、敷居が高い印象を与えてしまい、若い人が入りづらい響きがある。そこで、漫画とコラボし、出版社に協力してもらいながら、若い人に『楽しい』『おもしろい』と感じてもらいたい」と話す。また、はー太さんも「文学といいながら、小難しい雰囲気の展示にはしたくなかった。誰がみても楽しい、見る人には文学のにおいを、色や形からも感じてほしい」という。

 

二人の言葉から感じるのは、『ギャラリー』を特定の人だけでなく、より多くの人に、もっと身近なものに感じてもらいたい、という純粋な熱だ。同時にArtsoupは、若手クリエイターにとって貴重な発表の場所でもあるのだそう。来場者にもクリエイターに対しても、アートの間口を広げていきたい。そんな信念が伝わってくる。

 

私も今回をきっかけに、「ギャラリー」に対する敷居がぐっと低くなった。よく考えたら、「ギャラリー」という場所に来たのは初めてかも。また朔太郎が生まれ育った前橋で、朔くんと会えたことに過去と未来の繋がりを感じ、とても感慨深かった。「次はどこで朔くんに会えるんだろう……」そう妄想しながら、前橋を後にしたのでした。(取材・文 ささ山もも子)

 

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