【1/3】サブカル好きの現代歌人!?伊波真人さん「短歌をエンターテインメントのひとつに」

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意外な接続――「美」と「笑い」の共通点

 

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音楽好きの伊波さん、時間を忘れてCDを物色。

 

―音楽が大好きとのことですが、好きなアーティストは? また、短歌への影響などはあるのでしょうか。

 

一番好きな日本のミュージシャンはキリンジですね。あと、坂本真綾さんやHARCOさんが大好きです。Steely Dan等の海外のミュージシャンもよく聴きますね。短歌への影響は、すごく大きいと思います。白状すると、元々キリンジの歌詞のような世界観を作りたくて、短歌を始めたんですよ。

 

現在はちょっと変わってきてはいるんですけど、そこで初期に受けた影響は大きいです。短歌の韻律にどういった言葉をのせたら気持ちいいか、っていうのも、歌詞から学んだ部分が大きいですね。

 

 

―映像もお好きとのことですが、影響を受けた作品は?

 

岩井俊二監督の作品です。文学的で抒情的。彼だけの表現を持っていて。十代のときとか、すごく影響されましたね。

 

あと、ジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』、ビクトル・エリセ監督の作品など…洋邦問わず見ます。もともと、美大の映像科にいたぐらいなので、僕の原点は映像だと思います。
普段は短歌以外に、映像、写真やデザインの仕事もやっています。「映像」と「言葉」っていう、二本柱。最近は言葉に寄ってますが。角川短歌賞の受賞直後なので、今は特に言葉に注力する時期ですが、一生両方続けていくと思います。

 

 

―深夜ラジオもお好きだとか……

 

「伊集院光の深夜の馬鹿力」とか、聞きます。はがき職人してました(笑)。 深夜ラジオの基本って、「笑い」ですよね。芸人さんがやってるものが多かったり、「笑い」っていうのが土壌としてある。「笑い」って“共感”ですよね。短歌も“共感”っていうのが大事な要素かなと思っていて。

 

僕は短歌を詠むとき、「美」という感覚を大事にしているんですが、「美」と「笑い」って実は近いんじゃないかと思います。全く遠いもののように思えるけど、人の心を動かす、“共感”という意味で、根本は近いんじゃないかと。ラジオは好きなので、機会があれば、もっと出たいですね。

 

短歌がもつ「想像の余地」

 

―映像や写真のように、風景をそのまま写し取るような方法ではなく、短歌という言葉を通して表現する方法をとられたのはなぜでしょうか。

 

映像的な感覚が僕のコアだと思うんですが、作詞に興味があったこともあって、言語表現にも興味があったんです。言語と映像の表現と両立させようとしたときに、短歌がしっくりきたってところですね。

 

 

―映像と短歌では、どのような違いが生まれると思いますか?

 

映像だと、すべて表現できますよね。たとえば、「朝、道を歩いていたら電線が光ってる」とか、すごく細かいディティールまで描ける。

 

言語化するっていうのは、“そのなかでどれをつかみとるか”ってこと、つまり抽象化するってことだと思います。そこに、読者の想像の余地が入り込みますよね。その面白さは、短歌が強いんじゃないかと思います。

 

 

―歌に想像の余地をもたせることで幅広い解釈が可能になる一方で、作者が伝えたい思いが届かなくなる可能性もあると思います。そのような問題とは、どのように向き合っていますか?

 

いま、若手歌人って、すごくわかりにくい歌をつくる人が多いと言われているんですよ。そのなかでも、僕はわかりやすさというものを心がけています。歌が未完成のまま読者に投げるっていうのと、想像の余地を残すっていうのは、違う問題だと思うので。僕は「一度研ぎ澄ましてから見せる」ってことをかなり意識してます。(取材・文 三七十)

 

次回に続く

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