【後編】最強の珍書が決定!ハマザキカク氏ら出場の珍書ビブリオバトル

珍書四天王+安村さん

珍書四天王+安村さん

 

“男の中の男”がいるのと同じように、“珍書の中の珍書”も間違いなく存在する。それは一体どんな珍書なのか? ハマザキカク、とみさわ昭仁、どどいつ文庫イトー、暗黒通信団ひだまいの珍書四天王に、一回戦を勝ち上がった安村さんが加わり、いよいよ頂点を決める闘いが始まった(一回戦の様子はコチラ)。

 

目次

スターター、腹話術、前衛芸術家、60言語速記法、文字のない小説……

 

最初に登場したのは、ライターでありながら、珍書ばかり扱う古書店「マニタ書房」の店主でもあるとみさわさん。取り出した一冊は『よーいドン!スターター30年(報知新聞社)』。陸上競技のスターターを30年務めた著書による自伝だ。

 

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特殊な職業のドキュメンタリーが大好きだというとみさわさんは、その魅力を「知っているようで知らないことがたくさん書いてあるのが面白い」と説明。

 

例えばスターターは、「位置について」と宣言してから1.7~1.8秒で「よーい」と続き、その後2秒前後で引き金を引くという豆知識を披露。また推薦ポイントとして文章が非常に上手いことをあげ、著者が引き金に指をかけてから引くまでの動作や心理描写を「まるで官能小説のよう」と絶賛した。

 

続いて一回戦で紹介した本がチャンプ本に選ばれた安村さんは、二回戦では『唇が動くのがわかるよ―腹話術の歴史と芸術(アイシーメディックス)』という腹話術の歴史研究の本を紹介。

 

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腹話術は三千年以上も前から存在し、預言者が神や霊の言葉を代弁するために使われていたという。ただ悪魔に乗っ取られたということで、投獄されたり魔女狩りされたりすることもあったそうだ。

 

また腹話術に欠かせないのが人形の存在。いつしかかけがえのないパートナーになり、奥さんと離婚したり、人形に遺産を譲るという遺言状を書いたりした腹話術師もいたのだとか。

 

洋書の輸入販売を行っているどどいつ文庫イトーさんは、『John Cage: Zen Ox-Herding Pictures(ジョン・ケージの「十牛図」画集)』を紹介。

 

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ジョン・ケージは音楽家・前衛芸術家で、「4分33秒」という無音の曲を作ったことで知られている。その彼が1988年に、紙の上に石を置き、その輪郭をなぞるという作品集を制作した。本書はその際、筆の絵の具をぬぐったペーパータオル、つまりゴミを十牛図に見立てた画集だ。

 

十牛図とは禅宗において、修行から悟りを開くまでの過程を,牧者と牛に例えて10枚の絵と短文で表したもの。ジョン・ケージが禅に傾倒していたことから企画・制作された。

 

ファンからすると垂涎もので、大学の美術館では展覧会もされたそうだが、イトーさんは「ファンでない人から見ると『?』という画集。意味があるような、ないような。もっともらしいものを形にするために、禅とこじつけている。まるでアイドル商法」と毒を吐いて笑いを誘った。

 

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