よき競争相手になろうよ、というのがメッセージだね
―夢を実現するにはチャンスを捕まえることも大事かと思いますが、そのはコツはありますか?
チャンスを捕まえるのも才能の一部で、努力ではないね。チャンスを与えられるのも才能なんだよね。運だよね、運も才能のうち、残念ながら。時代っていうのもある、どうにもならない。そういうのが受け入れられる時代背景ってのがあるからね。
芥川賞だって、事故みたいに取った奴いるじゃない。震災の後だからこれだよ、すごく嫌な事件があったから、あいつができたんだよってあるじゃない。それも才能のうちだから仕方ない。
―チャンスを捕まえられずにいると、なかなか結果が出なくて、不安になってしまうことがあるかと思います。朔美さんは自分が書きたいことと世間の評価との間で、迷ったりしたことはありませんか?
俺はそういうのは全く分からないなあ。勝手に自分のスタイルでやってるだけで、コンクールにも何にも出す気もない。元々賞を獲ろうと思ってないから、評価は全然気にならない。だって売れないんだもん。元々評価ないんだから、嫌になっちゃう。周りの目をはじめから対象としてないからじゃないかね。
寺山(修二)さんはうらやましいよねえ。俺なんか元々ファンがいないし、本が売れないんだから。情けないんだよ、あなた。評価というより売れる本を一生に一回書いてみたいね。それだけだね。今の希望は、売れたいよ。ざまーみろ、10万部売れたよとか、そういう目に遭いたいよ。
―ありがとうございます(笑)。最後に若手の物書きやクリエイターへメッセージをお願いします
よき競争相手になろうよ、ってメッセージだね。生徒の卒業式のときにも言うんだ。卒業したら悪いけどライバルだから、闘い合うからって。
昔さ、東野芳明さんっていう美術評論家が、うち(多摩美術大学)で美術評論のコースを担当していたんだけど、「何でおれが同業者で競争相手を育てなきゃいけないんだ。お前らが出たら潰してやるって」言ってたもん(笑)。だから、よきライバルとして生きて行こうぜ!
ーお忙しい中、こんな企画にお付き合いいただき、しかも貴重なお話をたくさん聞かせていただいて、本当にありがとうございました!
取材・文 コエヌマカズユキ
photo by twinkle