【第1回】月子を甲子園へ連れてって 出版甲子園グランプリへの道2016

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「リベンジします」

これは西武ライオンズに入団して1年目の松坂大輔が、千葉ロッテマリーンズのエース・黒木知宏との投げ合いに負けて発した言葉だ。1999年のことである。怪物ルーキーと呼ばれた男は宣言通り、次のロッテ戦で黒木に投げ勝ち、見事に有言実行を成し遂げたのだった。

 

我々月に吠える通信編集部も、リベンジの炎を燃やしている。遡ること一年前、出版甲子園のグランプリを目指す「月子を甲子園に連れてって」で、決勝進出どころか、2回戦で惨敗したからだ。
※詳しくはコチラをご覧いただきたい

 

志半ばで敗退し、罰ゲームでう○こカレーを食わされたそーたとみもりんの意思を継いで、今年も月吠えインターンの学生2名が立ち上がった。

 

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ナツミさん(左・大学4年生)と綾乃さん(大学2年生)だ。

 

目次

出版・ライターを志しゴールデン街を訪れた女子たち

 

簡単に二人のことを紹介しておこう。まずナツミさんとの出会いは、2015年11月のある夜のこと。本WEBマガジン編集長の僕・コエヌマが喫茶店で仕事をしていると、月に吠えるゴールデン街店のスタッフから電話があった。

 

「コエヌマさんに会いにJD(女子大生)が来ていますよ」

光の速さでお店に向かったところ、いたのがナツミさんだったのだ。

 

話を聞くと、将来は文章を書く仕事がしたいそうで、就活では出版社なども視野に入れているとのこと。僕などの大して役に立たないような話にも、目をキラキラさせて、真剣に耳を傾けてくれたのが印象的だった。非常にやる気がありそうだったので、その場で月に吠える通信のインターンに誘ったところ、メンバーに加わってくれたというわけだ。

 

今回は就活中にも関わらず、出版甲子園企画にも快く参加してくれた。文学やカルチャーに精通する一方、ドルヲタで恋愛ゲーム好きでもある彼女。好きな分野に関する知識と情熱は相当なもので、本づくりでもそれが発揮されるのではと期待が持てる。

 

* * *

 

一方の綾乃さんは、ネコ文壇バーこと月に吠える2号店で、金曜日の店番をするスタッフである。東北は山形県出身で、2015年に進学のため上京した。将来はライターになる、という明確な目標を持っており、2016年の春から、出版関係者が多く集まる月に吠えるでバイトを始めたのだ。

 

この綾乃さん、前から月吠えのことを知ってくれていて、Twitterで話しかけてきたり、バイト募集をした際にはすぐ応募して来たりと、やる気があるように見えるのだが、実はかなり消極的。

 

お店にはライターや編集者がたくさん来るので、どんどん話しかければいいと思うのだが、知らない人の前だとすっかりおとなしくなってしまう。そのため、僕が「ヘタレ綾乃」と命名したほどだ。

 

この出版甲子園を通じて、一皮むけてほしいというのが僕の切なる願いである。また台風の目になり、大番狂わせを起こしてくれることをひそかに期待している。

 

そして5月某日夜、第一回目の企画会議を開催した。

 

初対面のあいさつは「存在ごと消えたい」

 

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「こんにちはー!」

先にやってきたのはナツミさん。就活の真っただ中の彼女は、この日も説明会があったようでリクスー姿だ(ひそかに萌えたことは本人には言わなかった)。少し遅れて綾乃さんも登場し、二人が対面。

 

ナツミ「はじめましてー」

綾乃「は、はじめまして……すごい人だと聞いています」

ナツミ「えっ?」

綾乃「私なんか存在ごと消えたい……」

ナツミ「ええっ!!??」

 

明るくあいさつをするナツミさんに対し、綾乃さんはネガティブ発言。実は事前に僕が、「ナツミさんは超頑張り屋」「優秀」「しかも美人」などと吹き込んでいたため、綾乃さんは「一緒に出るのが怖い……」と心が折れかけていたのだった。刺激になるかと思ったら、まるで逆効果だった……。

 

コエヌマ「じ、じゃあ、どっちから発表しようか?」

そう聞くと、綾乃さんがすかさず挙手し、「ナツミさんのあとに発表するのはすごく辛いから、先に発表してしまいます」とヘタレ発言。ということで、綾乃さんから企画発表スタート。

 

急増中の❍❍女子を丸裸にする企画

 

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綾乃さんの企画は、「○○女子」というもの(※企画進行中につき、詳細は伏せる)。自分を可愛く見せることにどん欲、でもぶりっ子とは違い、自分を可愛いと思っていることが周囲にバレてもいい。そんな最近急増中の女子の生態を描いた本だという。

 

実はこの○○女子という言葉は辞書にも載っており、市民権を得ているそうだ。僕は聞いたことがなく、事例を説明されてもピンとこなかったが……。

 

それでもナツミさんは、「あー分かる! 読んでみたい」と目を輝かせる。アイドルの中にも○○女子はいるらしく、その感覚がよく分かるようで「題材としても面白い。それを審査員にどう伝えるのか難しいけど、その分やりがいがあるのかなと」と、興味津々だった。

 

だが綾乃さんは、○○女子という題材は決めているものの、企画の詳細までは詰め切れていないよう。「ただ紹介して、『○○女子って可愛いね』で終わるのはつまらない。現段階では、どうしようかなっていうのはあります」と迷いを覗かせる。

 

確かに、研究系にするのかネタ系にするのか、あるある系にするのか。見せ方もエッセイ風にするのか、はたまたコミックエッセイにするのか、いろいろな方法が考えられるだろう。そう伝えると、綾乃さんは「これから深く考えて、どうするか決めていきます」と、次回までの宿題にした。

 

正直、僕はまだ「○○女子」について理解できていなかったが、時事性があるというのは一つの強みだと感じた。具体例をきちんと集め、読者から共感される内容になれば、勝機はあるかもしれない。

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