【ひとり出版社Vol.2】実務の経験を積むことで、出来ることが増えていく 『堀之内出版』小林えみさん

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個人や小規模で出版社を運営している人にお話を伺う「ひとり出版社企画」。第二弾では、「堀之内出版」の小林えみさんにお話を伺った。

 

生活保護の実態を著した社会派の書籍や哲学人文の書籍の他、子どもから大人まで楽しめる絵本など、堀之内出版が刊行する本の内容は多岐にわたる。メインの社員数は2人にもかかわらず、年に20点以上を刊行する。

 

また、多くのイベントを開催して本と人との接点を増やしている小林さんは、小規模出版社という働き方について、どのように考えているのだろうか。

 

違うジャンルにも興味を持ってもらうような工夫を

 

出版社を始める前は何をされていましたか。

 

昔から読書が好きで、本に関わる仕事に就きたいと思い、出版社を志望して就活、採用された出版社で編集者として働き始めました。

 

 

― もうずっと、編集者として働かれてきたのですね。

 

そうですね。20歳から働き始めたので、もう18年、編集に携わっています。

 

 

― そこから、どのような経緯で堀之内出版を立ち上げられたのでしょうか。

 

堀之内出版は、私が起業した会社ではありません。若者の労働問題に取り組むNPO法人POSSEの雑誌『POSSE』を刊行する目的で、出資者の方が立ち上げた会社です。

 

 

― そうだったんですね。では入社された経緯を教えていただけますか。

 

東日本大震災のボランティアを経験してから、編集者として、もっと直接的に社会の役に立てるような出版をしていきたいと思うようになりました。POSSEへボランティアで参加したことをきっかけに雑誌『POSSE』の関わりを通じて、堀之内出版において単行本の発行などを担当することに。

 

当時は他に堀之内出版専属の人員がいなかったため、基本的には編集・営業をひとりで担当しました。

 

 

― 御社が出版をする上で、大切にされているコンセプトを教えて下さい。

 

人と本に関わるテーマを「働く」、「生きる」、「考える」の3つに分類して、関連の本を発行しています。「働く」は、「POSSE」のような労働問題、思想や人文をテーマとした本を「考える」、それ以外を「生きる」としています。

 

ジャンルを絞らないことで、ひとつの版元から刊行されているという共通点を介し、違うジャンルの本へ、読者の興味・関心が広がっていけばいいなと思っています。

 

 

小規模出版社にとって、今は本を読者に届けやすい時代

 

― 昨年から社員が一人増えて、二人体制になったとのことですが、小規模でも運営を円滑にしていくコツはありますでしょうか。

 

出版の仕事は細かい仕事が多岐にわたります。それぞれの負担量は少ないのですが、気が付くと仕事が手一杯になりがちです。そうなると仕事をしているのに利益を出しにくくなってきますので、ビジネスとして出版業をするのであれば、なんでも自分で抱え込まず、分業や外注できる作業はうまく見極めて効率的に仕事をした方が良いのではないでしょうか。

 

たとえば、堀之内出版では本の発送作業はアルバイトを依頼するなどしています。

 

 

― 規模に比べて、年に刊行されている本の冊数が多いと感じました。

 

本の1点あたりの発行部数は減少の傾向があり、特に専門色の強い本はシビアな状況です。たとえばこの『神話・狂気・哄笑』という思想批判の本は3500円ですが、1000部だとすると売上は350万円と計算できます。

 

 

売上のうち出版社の利益は1、2割です。350万円で2割だとしても70万円。書籍だけに関していえば、出版社の利益はある意味シンプルで、部数を伸ばすか、点数を増やすかのいずれかになります。

 

とはいえ、どちらも簡単にできることではありません。本を出す、ということはロマンの塊のように見られることも多いのですが(笑)、きちんと売り上げていくことは大変で、いかに達成していくかはシビアに考えています。

 

 

― 本作りをされる中で、今の出版業界に何か思うことはありますでしょうか。

 

まず流通に関しては、取次会社を通す今までの仕組みは、徐々に時代とそぐわない面も出てきており、少ない部数からでも、書店と出版社を繋げて流通させる会社も出てきているなど、今は多様な方法が生まれつつあると思っています。

 

また、書籍の発行自体も最近は手軽になっていますよね。昔は印刷会社の機械を使わないと組版・印刷ができませんでしたが、今は家庭用のプリンターでも出力できたり、組版(紙面に文字や図版を配置すること)もInDesign(紙面構成のソフト)を使えばできたり、手段や道具が増えてきています。