コンセプトかぶりのバーに殴りこみ!?「The OPEN BOOK」の若き店主と語るゴールデン街への愛

文学はもう終コン?そんな中でもお店をやる意味

 

 

コエヌマ 「The OPEN BOOK」はレモンサワーのお店としても人気がありますよね。お客さんは、レモンサワー目当てで来る方と、本を目当てで来る方と、どれくらいの割合なんですか?

 

開さん レモンサワーが98%ですね。本を手に取ってもらうことがあっても、うちの店で一番受けがいい本って児童書とかなんですよ。

 

よく女性のお客さんが「懐かしい!」って手にとっていて。別にその本が悪いってわけでは全然ないんですけど、結局、文学が死ぬなって思うのはこういうときですよね。

 

コエヌマ 文学が死ぬと言うのは?

 

開さん たとえば柄谷行人の『探究』が揃っていることに注目する人なんて、1ヶ月に1人いるかどうかです。

 

やっぱもう文学って終わりかけてるんですよね、たぶん。でも、うちと違って「月に吠える」は読む人が来ているから素晴らしいですよね。

 

コエヌマ 自慢の選書に気付かれないのはちょっと辛いですね……うちは本や出版がコンセプトなので、確かに読書好きが集まりますが。

 

開さん うちの店はどうしてもファッションとしての文学をかざしてしまっているところがある。

僕がこう、濃度は低いけど、色んな人がたくさん来るところを相手しているとすれば、そっち(月に吠える)はフィルタリングしてってぎゅっと濃縮された人たちが来てるんでしょうね。

 

だからこそ「月に吠える」は、スタッフの裁量が超大事なはず。うちはバイトでガンガン回しても問題ないけど、こっちはそれこそコエヌマさんが店の味みたいなものを守ってるから、何とかなってるんでしょうね。

 

コエヌマ 急に褒めはじめましたね(笑) でも本当に、世間的に見たらに本は市場が小さくなり続けているし、その中でも文学はかなり厳しい状況ですよね。月に吠えるにいると、本の話が当たり前に通じる。

 

けれど以前、ほかのバーでお客さんと話したとき、「どんな作家が好きなんですか?」と聞かれたので、「安部公房や中上健次が好きです」と答えたら、キョトンとしてましたから……文学が一部の愛好家を除いて、市民権を得ていないことを痛感しました。

 

開さん でも刺さる人にはちゃんと刺さるから、本を置いておくのがいるんですよ。100人にひとりがちゃんと反応してくれるように、ちゃんとこっちも用意しておく。そういうつもりでお店もやってますから。

 

コエヌマ 素晴らしい!

 

ふたりが語る、ゴールデン街への思い

 

 

コエヌマ ゴールデン街で、ちょうど僕らは時代の変わり目の世代じゃないですか。一見さんお断りがほとんどだった時代からお店をやってらっしゃる方たちと、一見さんも外国人もウェルカムの新しい世代が入り混じる中で、ゴールデン街を背負うってちょっとでも意識してます?

 

文化、歴史の部分でほんの少しでも。ちなみにうちは、めちゃくちゃ意識してます。

 

開さん それはむちゃくちゃ意識するでしょう。ゴールデン街は各々が好きなものを表現する場所だと思ってるから、色々なお店が出来てほしい。

 

昔は八百屋さんもあったし、人も住んでた街だったから、今後そういう風にカオス感が増してきたほうが面白いですよね。そしたら昼間も来る理由ができる。

 

コエヌマ そう考えるとあのインドカレーの『エピタフカレー』は、完全にカレー大好きなオーナーがやってるじゃないですか。

 

開さん あそこなんかもう最高なんだよね。やっぱこうルールがないってことを利用して、好きなことをやればいいし、ある意味今は観光地として恵まれているから、みんな好きなことやればいいのに。

 

※この後もゴールデン街論は白熱し、少々過激なので割愛します

 

「バー性善説」誕生? 二人がこれから挑戦したいこと

 

 

コエヌマ ゆくゆくの目標って何かあるんですか?たとえば10年後、20年後。

 

開さん やっぱり飲食は極めたいですね。

 

コエヌマ たとえばレモンサワーだったら、レモンサワーで日本一くらいに?

 

開さん もうレモンサワーは日本一なんで(笑)。他の分野ですね。次は御茶サワーかな。純粋に好きなんですよね、飲食が。知人と協力して今度レストランのコーディネートもやりますし。

 

コエヌマ なんか開さんのことがわかってきた。ゴールデン街の常連に「ゴールデン街の何が楽しい?」って聞くと、「人との距離が近くて繋がりができる」って言う人が多いんです。

 

けど、それってゴールデン街に限ったことじゃなくて、場があればそういった機能を持つはず。開さんもそれを分かってて、拠点はゴールデン街ではあるけど、そこだけにとらわれず、繋がりが生まれる場を作り続け、広げ続けているみたいな。今度、何か一緒にしませんか?

 

開さん 本作りたいですよね。ふたりでできることだったら。

 

コエヌマ お、実はうちはこれから出版業やるつもりなんですよ! やっぱメーカー機能があったほうが絶対面白いことできるから。あとは萩原朔太郎の故郷である、群馬の前橋にも部屋を借りたんですけど。

 

開さん 前橋でお店やるんですか?

 

コエヌマ とりあえずオフィスとして。お店はどうしようかな。

 

開さん お店やったほうがいいですよ。ずっと開けっぱなしにしておいて、飲み放題の店。で、勝手に千円置いてってくれみたいな(笑)

 

コエヌマ 飲み逃げされちゃうじゃないですか(笑)

 

開さん それはもう善意に任せる。「バー性善説」ですよ。それやったら超かっこいいと思う。田舎の野菜の即売所みたいな感じで。コエヌマさんやらないなら僕がやります。

 

コエヌマ じゃあそれに近いものを何か考えます。

 

開さん じゃあ僕はこのアイデアもらってやろうかな。やりたいな、「バー性善説」って(笑)

 

 

何だかんだで意気投合をした二人。実は田中開も、さわやかイケメン・リア充に見えて、ゴールデン街がよく似あうダメ人間。

 

かつて、祖父の蔵書を使って展示会を開いたことがあった。そこで得たお金で後輩たちを引き連れ、六本木の大人のお店へ行き、一晩で使い切ったのだとか。

 

そんなダメ人間&ダメ編集長だが、ゴールデン街への愛情は二人ともすさまじく、街の将来を背負うくらいの覚悟を持っている(?)ことが伝わってきた。

 

「月に吠える」と「The OPEN BOOK」の行く末を、これからもぜひ見届けてもらいたい。(取材・文 ナガイミユ)

 

前橋で本当にお店やります!

そしてそして……二人は本当に、前橋でお店を開くことになりました! 開店資金をクラウドファンディングで募っていますので、ぜひご協力のほど、よろしくお願いいたします!

※クラウドファンディングのページは以下のリンクです。

新宿ゴールデン街発!若きブックバーのオーナーたちが仕掛けるお店が前橋にオープン!