コンセプトかぶりのバーに殴りこみ!?「The OPEN BOOK」の若き店主と語るゴールデン街への愛

 

 

ある日の「月に吠える」でのこと。電卓を前に渋い顔をする編集長・コエヌマの姿があった。

 

取材班「どうしたんですか?」

コエヌマ「最近どうにも売上が落ちていて……このままじゃスタッフへの給料も家賃も払えなくなるかも……」

取材班「ええっ、ということは、我々への原稿料も払われなくなるの!? 困ります!」

コエヌマ「これも一昨年ゴールデン街にできた、うちと同じく本がコンセプトの『The OPEN BOOK』のせいだ、きっと。後出しのくせにうちよりも盛況だとか……くそっ!」

 

コエヌマはおもむろに立ち上がり、パイプ椅子を手に取った。

 

コエヌマ「あんな店ぶっ潰してやる!」

取材班「ダメですよ、そんな……」

コエヌマ「うるさい、行くぞ!」

 

そして編集長は無理やり取材班を引き連れ、「The OPEN BOOK」を目指したのだった。

 

目次

いざ「The OPEN BOOK」へ

 

さて、コエヌマ編集長が目の敵にしている「The OPEN BOOK」とは、2016年の春にオープンした、本とレモンサワーがコンセプトのお店だ。オーナーの田中開さんは直木賞作家の故・田中小実昌氏の孫。

 

スタイリッシュな店内には、小実昌さんの蔵書をはじめとした本が、天井まで届く本棚にずらりと並んでいるらしい。メディアにも取り上げられまくっており、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの店である。

 

 

お店の前に到着。オシャレだ……店構えからして既に差をつけられている気もする、と取材班は内心思ったが、もちろん口には出さない。いざ、お店の中へ。

 

 

そこには図書館さながらの本、本、本……月に吠えるにも300冊ほどの本があるが、おそらく桁が違う。1000冊は優に超えるのではないか。お洒落な内装も女性ウケがいいだろうし、店内の中央に設置されたランドルフィルターはインスタ映えしそう。

 

 

もはや負けを認めた方がいいのでは……しかし、編集長は全く引く気がない。

 

編集長「田中開とかいうやつはいますか?」

スタッフ「いえ、飲み会に行ってるとかで、まだ来ていません。もうすぐ来ると思いますよ」

編集長「ちっ、店番を人に任せて飲んだくれてるとは、大した身分だ。じゃあ自慢のレモンサワーとやらを飲んで待ってやるか」

 

 

出てきたレモンサワーは、居酒屋のそれとは見た目も香りも明らかに違う。グラスにもこだわっていることが一目でわかる。一口飲んだ編集長は、「うーん、悔しいけど美味しいな」とその味を認める。

 

お店だけでなく、飲み物もここまでハイレベルだとは……取材班の目から見ても、圧倒的な差をつけられているような気がしてきた。それを感じてか、編集長もイライラしている様子。

 

ゴールデン街にお店を開いた理由

 

待つこと数十分。編集長はすでにかなりの量のお酒を飲んでいる。

 

編集長「田中開はぁ……! まだ来ないのかぁ……!」

取材班「編集長、飲みすぎです! そんなんだと巌流島の佐々木小次郎みたいに返り討ちにされちゃいますよ!」

田中「お待たせしました! 何か、僕に用があるって聞いて来たんですけど?」

 

待ちくたびれてただの酔っ払いになりつつある編集長の前に、ついに宮本武蔵ならぬ、「The OPEN BOOK」オーナーの田中開さんが現れた!

 

 

開さんは日本とドイツのハーフで、モデルのような顔立ち、187センチの長身である。編集長は身長164センチ。原動力はイケメンへの憎しみ、座右の銘は「来世に期待」という、典型的な非リア充。ここでも圧倒的な差が……。

 

しかし臆せずに、さっそくいちゃもんをつける編集長、コエヌマ。

 

コエヌマ「お前の店のせいでうちの売り上げが落ちてるんだよ! あとから似たようなコンセプトのお店を開きやがって、どういうつもりだ!」

開さん「へ? どういうことですか?」

コエヌマ「とぼけやがって! うちの店のコンセプトをパクっただろ!?」

開さん「いや、うちの店を開いたのにはちゃんとした理由があって……」

 

そう、開さんがゴールデン街に店を開いたのには理由があった。祖父の田中小実昌氏がゴールデン街を愛し、頻繁に飲み歩いていたことから、その祖父が大好きだった街で、遺産とコレクションを引き継いで店をオープンしたのだという。(店をオープンするまでの経緯はこちらの記事が詳しい)

 

開さん「店のコンセプトは『一杯と一冊』で、一杯飲んで、一冊読んでもらう。もちろん飲んでる間に読みきれないかもしれないけど、その本と出会うきっかけになればということでやってるんです」

編集長「な、なかなか志のあることやってるじゃん……」

 

祖父の意志を継いで、言わば橋渡し役としてお店を開いた開さん(月に吠えるなんて眼中なかったんじゃん、ってツッコミはナシで)。

 

軸の通った考え方に、編集長も感心した様子。気がつけば最初の勢いは鳴りを潜め、すっかり開さんと意気投合したようだ。

 

どうなることやらとハラハラしていた取材班も一安心ということで、せっかくなので、本をテーマにゴールデン街に場所を作った新世代のオーナーたちという共通点から、ふたりに本やゴールデン街への思いを語ってもらった。

 

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