【後編】蛙の詩人・草野心平が愛した福島県の小さな村 小さな文学館を訪ねて

 

天山文庫を村人の交流の拠点にしたい

 

親交のあった版画家の棟方志功さんによる書。

 

――では今後、天山文庫でしたいことは?

 

若い方や、心平さんを知らない人にも来ていただきたいですね。天山文庫は、心平さんがいたころは、人々が集まる拠点みたいになっていて、みんなお酒を飲みに来たりお祭りをしたりしていたのですが、本人がいなくなってしまうと、知っている人たちしか来なくなってしまって。なので、多くの人が来てくださったり、知るきっかけになったりすることもやりたいなと思ってますね。

 

 

――確かに。多くの人に足を運んでもらい、同時に地域全体も盛り上がれば何よりですよね。

 

そうですね。イベントとしては、毎年「天山祭り」というお祭りを開催していますが、ちょっと高齢化してきているところがあって。若い人を呼びたいですね。去年の天山祭りは、天山文庫のツイッターを見て来た方が結構いらっしゃって。村の人に「今年の天山祭りは若い人が多いね」って言われて嬉しかったです。

 

ただ、ぺらっとしたフェスみたいにはしたくないんです。村らしさとか、ここの場所だからこそ成立したものってあると思うので。ずっと続いてきた歴史とか、ずっと続けてきた人たちの意見を尊重したいんですね。そういったものの折り合いをつけて、何十年も来ている人はもちろん、新しい人も敷居が低くて入りやすいものを、何か一つ増やしていければなと思いますね。

 

訪れた人が記念に名前を書く芳名帳。この冊数から、どれだけたくさんの方が訪れたか伺える。

 

――「天山祭り」はどのようなお祭りなのでしょうか。

 

毎年7月の第二土曜日に開催しています。「歴程」という、心平さんが作った同人グループの方々が、心平さんの詩の朗読をしています。谷川俊太郎さんも入られていたんですよ。ほかには、心平さんの肉声の詩の朗読テープを聞くことが毎年恒例になっています。

 

心平さんと会ったことがある方たちも全国から来てくださって、バンド演奏などのパフォーマンスをしてくださります。あとは、お酒を飲みながら、地元の方が作ってくれたお弁当とかを食べながら、みんなで楽しくワイワイやるようなお祭りです。最後に池を囲んで、「川内甚句」を皆で踊って終わる、というのが大体のパターンですかね。

 

 

――そういったお祭りも、天山文庫があってこそですから、本当に貴重な場所ですよね。

 

そうですね。村の人に聞くと「天山文庫は村の誇りだから」って皆さん言うんですよ。川内村の象徴にはしたいですね。ただ、だんだん村の人同士も接点が少なくなってきているのも現状です。

 

だからこそ、村の人たちの交流の場として開放していければと思っていますね。単なるシンボルだと、「あればいい」という風になってしまう。けれど、こういった建物は、人が行き来しないと死んでしまうものですから。

 

あと、心平さんと会ったことがある人は、色々と教えてくださったりするのですが、その下の年代の方は「心平さんって誰?」ということが川内村内でも起きているんですね。そういった人たちにも、「心平さんってすごいんだよ」と思ってもらえるきっかけになるようにしたいです。

 

 

――ありがとうございました。最後に読者へメッセージをお願いします。

 

(震災の影響で)立ち入れない区域もあり、まだまだ問題はつきないですが、若い人たちが来て民宿を始めたり、ギャラリーをつくったり、ラジオを配信したり、徐々に集まっているんです。東京からも引っ越してくる方が多いですね、

 

お店やってみたいとか。踊りやお祭りを保存したいと、文化継承も若い方が頑張っているんです。川内村の出身であるとか関係なく、やりたいって言えばみんな「じゃあ手伝うよ」って言ってくれるので。

 

したいことがあるとか、逆に何をすればいいんだろうと迷ってる人は、一度来てもらえれば面白いものが見つかるんじゃないかと思いますね。現実的な話、補助金もおりたりするので、お金ないからできない、っていうのがあまりない。やりたいですって言えば何とかなる環境ですね。

 

なかなか来づらい場所だと思いますが、新しいことを始めたり、発見したりできる場所ですし、そのきっかけの一つに天山文庫がなれればいいなと思っています。

 

 

取材を終えて

「中の人」のお話を通して、川内村にとっての心平さんの存在の大きさ、懐の深さ、そして村の方々との親密さをひしひしと感じた。印象的だったのは、新しい取り組みにも積極的であり、同時にこれまでの天山文庫が築いてきたものも大事にする、という考え方。

 

県外から人を呼ぶ、といっても若い世代をターゲットにしたような一過性のイベントではなく、いかに天山文庫の魅力を活かし、幅広い年代の人に楽しんでもらうか、ということを意識されているかが伝わってきた。

 

モリアオガエルがつないだ縁から始まった天山文庫は、これからも多くの人々をつなげていく。人との交流が大好きだったという心平さんも、それを喜びながら見守っていくのだろう。(取材・文 月に吠える通信編集部、ささ山もも子)

 

天山文庫

住所:福島県双葉郡川内村大字上川内字早渡513
開館時間:午前9時~午後4時
休館日:月曜(祝日の場合は開館)
入館料:一般300円、高校生・学生250円、小・中学生150円(20名以上の団体は50円割引)
ホームページ:http://www.kawauchimura.jp/sp/page/page000108.html