詩、セリフ、エッセイから読み解く、映画監督・園子温のすさまじい言葉の力

Photo by Dick Thomas Johnson.

 

園子温(そのしおん)をご存じだろうか。『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』などの代表作で知られる、日本の映画監督である。

 

10代のころから現代詩の雑誌に投稿し、17歳で詩人デビュー。「ジーパンをはいた朔太郎」として注目される。その後、映画制作の道に進み、1987年のぴあフィルムフェスティバルに応募した『男の花道』でグランプリを受賞。以降、発表する作品は世界中の映画祭で賞を受賞し、国際的な映画監督としての地位を固める。

 

また、路上パフォーマンス集団「東京ガガガ」やバンド活動など、映画以外の表現も積極的に行う、型に嵌らない表現者と言える。

 

園監督の映画と言えば、暴力的なシーンや、赤色を多用した過激な映像に焦点が当てられがちだが、今回は彼の原点とも言える言葉(詩・作中のセリフ・コメント)を通して、その精神性に触れてみたい。

 

『モヤモヤモラル』より

 

 

オマエの本当の言葉を

オマエは口ごもったまま

この世を去る気なのか

まだオマエが、美術の時間にいい絵とは、

こういうものだと先生に説明される前の

オマエの絵

まだオマエが、誰かにこういうものがいい人生なんだと言われる前の

オマエの正体

オマエの本当の声

オマエの本当の言葉

思い出せ

オマエが

だれだったかを

 

子どもの描く絵は、配色が現実的で無かったり腰の辺りから手が生えていたりと、突拍子のなさで大人たちを驚かせる。そして、その微笑ましいとされていた絵は、次第に「こんなのは有り得ない」と言われ、写実的な方向に正される。

 

人生だってそうだ。安定した生活を得るために、スーツを着込んで出社し固定給をもらい、そのうち結婚して子どもを産み育てる。未だにそれが「普通の」人生だとされる風潮がある。この詩はそんな私たちに、自分とは何か、何のために生きるのかを問い直してくれる。

 

『本当の表現者』より

 

 

世界を変えたくないのなら

表現はやめるべきだ

流されたほうがいい

既視感をうろつけ

孤独とはおさらばして

他人の祭ごとではしゃいでいろ

 

園監督の言葉は、真っ直ぐに私たちを見据え、時には切りつけられた感覚を覚える。人に流され、同調した方が楽に生きられるぞ と、一見読者を突き放しているように思える言葉。

 

しかし、筆者はこの詩の最後に、次のようなメッセージが続く気がしてならない。「俺は世界を変えるために、孤独の中で表現し続ける。あんたはどうする?」と。冷たくあしらっているかのような言葉の中に、込み上げるような熱さを感じ、居ても立っても居られない気持ちになる。

 

ここまで園監督の詩を紹介してきた。続いて紹介する映画のセリフは、端的で印象に残るものが多いように感じる。