オンライン読書会に初心者が涙目で飛び込んだら見える景色が変わった話

 

会話は成立するのか……不安と緊張

写真はイメージです。

 

今回の参加者は主催を入れた6人、少人数制のためこれで満席だ。女性が4人。男性が2人。年齢も皆バラバラだった。軽く自己紹介をする。私だけが読書会は全くの未経験であるということが判明し、ここで少し怖気づく。

 

「課題図書は読み切れましたか?」「こういった分野の本は読みますか?」と森さん。課題である書籍、ジャンルをどのくらい読み込んでいるか、これが司会をする側にとって大事なデータになるそう。ちなみに私は推理小説は読まない。江戸川乱歩の作品も初めてで、前日に一度読んだきり。

 

次に会の進め方について。森さんが最初にある質問をし、話が広がればそのまま盛り上がってもいいし、そうでなければ課題図書のストーリーを追って、その都度好きな話題で話してもらうというもの。

 

ある質問とは、きっと難しいものに違いない。画面に映る私はなにごともないかのような顔をしていたが、内心穏やかではなかった。

 

「物語に入るこの段階で、コメントしておきたいことはないですか」

 

質問はいたってシンプルなものだった。しかしまだ油断はできない、ほかの参加者の出方をうかがう。

 

「物語に出てくる間取りを想像するのが難しい」とひとりの声。確かに、大正時代に発表された作品ということもあり、文章だけでは当時の生活空間は想像しづらい。

 

「では、そこも含めて皆さんと話しながら読み進めていければと思います」

 

いよいよ中身に入っていく。

 

 

「こういう古本屋の描写を、はっきりイメージできた方はいますか」

 

物語に出てくる建物や場所をイメージできたか、またそれはどのようなものか、森さんが質問しながら進めていく。想像していたような難しい問いが出てくることはなく、しかしそれをきっかけにそれぞれの記憶やイメージが言葉になると、こうも人によって違うのか、と楽しい。

 

「こういう障子を見たことがありますか」

 

話のキーポイントとなるのは障子の形状なのだが、私は実際に見たことがなく、ネットで調べてみたものの、どうもこれといった答えがない。

 

「実はわからず、読み進めるうえで引っかかっていたのでどういうものか知りたいです……」

 

ここではじめて発言をした。ほかの参加者からも同じ声。実際に見たことのある人が、”障子わからない問題”を解決へと導いてくれたのだが、私は耳を傾けながらも、「言葉を声に出して伝えること、共感されることはこんなにも嬉しいのか!」と余韻に浸っていた。自分の中だけで終わっていた本の世界を誰かに伝えることができる喜び。

 

そして気づき始めていた。情報や知識の交換だけが読書会で得るものではないのだ。

 

それにしても森さんの司会がうまい。こちらに話題を振りつつ、豊富な知識でさらっと補足してくれる。返しもなんてスムーズなんだろう。主催者によってもそれぞれの色があり、得るものや発見は違ってくるのだろう。

 

気づけば惹かれていく

 

あっという間に1時間が経過し、ここで5分間の休憩。カメラを切ったり、飲み物を飲んだり各々一息つく。なぜこの本に惹かれたか、と参加者同士で話に花が咲いていたのも良かった。当たり前だがひとつの本に惹かれ、それを手に取る瞬間は皆それぞれ違うのだ。しかし今、ここでこうして同じ本の話をしているという巡り合わせ。感慨深かった。

 

再開し、物語はクライマックスへと進む。

 

「この推理に説得力があると思った方はいらっしゃいますか」

 

探偵推理小説ならではの、犯人や、それを暴いた推理についても深く切り込んで行く。読後なにを感じたか、なぜそのような感情を持ったか、登場人物、作者、完結したひとつの作品を再度いろんな角度から見ていく。推理小説は普段あまり読まないと明言していたが、この頃には作品に愛着が沸き、乱歩の書いたほかの作品も今すぐ読みたくなってくる。

 

「この作品が何年に発表されたかご存知の方はいらっしゃいますか」

 

作品が生まれた時代背景から読み取れること、なぜこの本を課題にしたのか、専門知識を学んできた森さんだからこその捉え方がとても面白く、ため息が出たが、ここは参加した人だけの特権にしておく。最後に、知識があるとまた違った楽しみ方が生まれる、ということを教えてくれた気もする。

 

興奮冷めやらぬ私は、主催の森さんにぜひ話を聞きたい! と後日取材を申し込んだ。知識がない状態で参加するということ、また今後増えていくであろうオンラインイベントについてもお話を伺った。