【後編】個性派本屋「双子のライオン堂」の1日スタッフを体験して気付いた、これからの書店のあり方

目次

 

「誰もやっていない」と言われるとやりたくなる!出版から勉強会まで

 

――本の販売だけでなく、いろいろなことにチャレンジされていますよね。最近では、雑誌『草獅子』も発刊されたかと思います。これはどういう経緯で始めたんですか?

 

雑誌が好きで作りたかったというのはありますね。ある日、お客さんから「双子のライオン堂さんの選書者たちが文章を書いたら、売られている文芸誌と同じくらいの規模で作れるよ」と言われたんですよ。「確かに! じゃあ作ろう」という流れですね。

 

あと、新人も含めて、作家の活動の場を作りたいというのもコンセプトですね。メジャーな文芸誌は今、数えるくらいしかないんです。そのなかで新人が書けるスペースは限られていますよね。文芸誌に載っている人が偏っている。売れる人には注文が来るけれど、そうでなければ来ないといった具合に。

 

でも文芸って、そういうものではないと思うんですよね。そこで、発行部数は多くはないですが、文学をやりたい方の作品発表の場が作れたらな、という思いがスタートにありました。

 

 

――イベントとしてはもうひとつ、「本屋入門ゼミ」もありますね。これは「本屋になりたい人のための勉強会」という位置づけなんでしょうか。

 

もともとはそうですね。「本屋になるための情報ってとても少ないね」と、BOOKSHOP LOVERの和氣正幸さんと話していて。僕が本屋を始めたときは、取次との付き合い方なども含めて、ほとんど手探りでしたからね。「本屋をやりたい人ががんばってもできないじゃん」と思ったんです。

 

そこで、本屋になりたいっていう人が、いろんなアイディアで本屋をやって、何かひとつでも生き残る方法が見つかればいいなと思い、和氣さんと一緒にゼミを始めました。

 

内容は、僕自身の経験を交えながら、僕に本屋をやるノウハウを教えてくれた人たちをお呼びして、話を聞くということをやっています。これまでで2回開催し、合わせて約30人ゼミの生徒さんがいるんですが、そのうち6人くらいが本屋を始めてしまいました。責任重大ですよね(笑)

 

今後は、本屋をやりたい人のためのゼミというより、本屋について考えるゼミにしようと思っています。読者も、本屋のことを考えていると思うんですよね。「自分は本屋できないけれど、いい本屋は残ってほしいし、本屋がつぶれたら嫌だ」と思っている人は多いと思うんです。

 

でもそういう話って、飲み屋話に終わってしまうことがほとんどですよね。それではもったいないので、ゼミにしてみんなで考えて、実践していけたらいいなと思っています。

 

 

アルバイトをしてまで本屋を続ける理由

 

――双子のライオン堂書店のお休みの時間帯、たとえばお店のある日の午前中や、お店のない月曜日、火曜日は、竹田さんは何をされているんですか?

 

ほかの仕事をしています。清掃やコールセンター、コンサル事務、会社の経理など、掛け持ちしていますよ。本屋だけだと生活ができないので……。でも、双子のライオン堂は100年続けると決めたので、どこかでつぶれるよりは、自分が生きていける仕組み、本屋が維持できる仕組みを探していこうと思っています。

 

 

――そうしたほかの仕事をしてまで本屋を続ける原動力は何なんでしょうか?

 

本が好きだからですかね。本屋はこれまでやめたいと思ったこともないし、大変だと思ったこともないです。冷静になれば、もっとほかの楽しみもあるのかもしれませんが、本に囲まれているだけで幸せだし、読者の方がいい本に出会えるということが幸せなんです。自分が幸せだからやっている部分は大きいです。

 

 

――最後に、今後の展望について教えてください。

 

先ほども言いましたが、双子のライオン堂を100年続けることですね。また、本屋として新しいことをやりたいです。「本屋って自由だな。まだまだ終わってないじゃん」というところを見つけて提案したいと思っていますね。本屋ができる「足し算」を毎日繰り返して、ひとつステージを上げられるような何かを見つけていきたいですね。

 

 

お客さんとともに成長を続ける、双子のライオン堂。ただ本を売るだけでなく、集まった人が互いにコミュニケーションを交わす場としても機能していると感じた。そこでディスカッションが行われ、アイディアが生まれ、竹田さんの言う「足し算」が繰り返されて、新しいステージへ前進しているのではないだろうか。

 

双子のライオン堂にいる限り、「本屋が衰退している」とは感じられない。本を偏愛する一人として、今後もこれからの本屋のあり方をどんどん追求していただきたいと、期待せずにいられなかった。《取材・文 西東美智子(シュナスキー・ライティング)》

 

店舗情報

双子のライオン堂
住所:東京都港区赤坂6-5-21
営業:15~21時(水・木・金・土)(日・不定期)
WEBサイト:http://liondo.jp/

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