【後編】個性派本屋「双子のライオン堂」の1日スタッフを体験して気付いた、これからの書店のあり方

※前回の記事はコチラ

 

濃密な1日スタッフ体験を終えたあと、閉店までの時間を使って、店主の竹田信弥さんにインタビューさせていただいた。どのようにしてこのお店ができあがったか、お店を経営していくうえでの原動力は何かなど、双子のライオン堂の核心に迫る。

 

目次

選書は、良書を選り分ける大きなザルのようなもの

 

 

――お店にある本は、いろんなジャンルが混ざって置いてありますよね。

 

ジャンルの区別のようなものはみんなとっぱらっちゃおう、っていう考え方なんです。新刊と古本が混じっていたり、文系の本も理系も関係なく並んで置いてあったり、同じ本があっちにもこっちにもあったりします。

 

たとえば、Aという選者とBという選者は、思想上では違う立場にいても、読んでいる本は同じということがあるんです。おもしろいから、それをそのまま書棚にも活かしていますよ。

 

 

――約6割が選書棚とのことですが、その魅力のひとつは、「好きな作家がお勧めしている本に出会える」ということですよね。ただ、その選書者のことが好きな人と、まったく知らない人とでは、選書棚に対する魅力の感じ方が変わってきてしまうのではないでしょうか。

 

双子のライオン堂では、選書者を前面には出すことはしません。選書の意味というのは、むしろ、多くの本をふるいにかけて良書を選別するものだと考えているんです。今、出版不況といわれながらも、ものすごい量の本が世に出ています。厳しい言い方をすれば、内容の薄い本がたくさん出てきている。そんななか、どんな本を読んで何をどう得るかというところが難しくなっていると思うんですね。

 

そこで、双子のライオン堂が目指しているのは、「あそこの本屋にはいろんな作家さんが選んだ本がある。読者の何倍も本を読んでいる作家さんがジャッジして、『良書だ』と言っている本が置いてある」と言われることなんです。そこに信用があると思うんですね。

 

 

――そうなのですね! 確かに、選書者の名前はほとんど見当たりませんね。

 

そうなんです。「誰が選書しています」ということについては大々的に謳っていないし、今後も謳う気はありません。棚に馴染むインデックスがあるだけですが、選書してくれている作家の方たちも多分それに納得してくれています。

 

選書者を意識してしまうような棚になると、また違う意味付けになってしまうと思うんですね。それよりも、本当に僕が信頼できる作家の方にお声掛けをしていますね。そこは唯一といってもいいこだわりです。

 

 

――では、「この本が欲しい」という目的意識を持ったお客さんより、その本屋に来て「いい本」に出合いたいというお客さんがターゲットという感じなんでしょうか。

 

理想は2つあります。1つは、「何か本を読んでみたいけど、何を読んだらいいかわからない」という入門的な層です。そういう人がうちにきてくれれば、面白い一冊と出会えるメリットがありますよね。

 

もう一方は、読書の玄人層です。普通の本屋に行ってもつまらない、という人が結構いるんですね。そんな人たちがうちに来れば、ほかの本屋では目につきづらい本に出会えるメリットがあります。ベストセラーと呼ばれるものではなくても、いい本を置くようにしていますから。

 

 

――流行やベストセラーとは一線を画して、時代に左右されないいい本にこだわっているのですね。

 

そうですね。しかもうちの本は買い切りなので、お店に本をとどめていられる強みがあります。委託だと、「売れないから返そう」ということになってしまったり、半年や1年の委託期限を過ぎてしまうと、請求が来てしまったりします。そこに気を遣わなくてはいけなくなってしまうんですね。

 

でもうちでは、「作家さんやお客さんがいいって言った本を信じるんだ」という思いを込めて、腹をくくって本を置いていますね。新刊中心の本屋であるにもかかわらず、本が流れていかないという状態を、意識的に作っています。

 

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