しくじり今昔 「徒然草」「今昔物語」など古典文学のなかの笑える失敗談

 

ナンパ男に思わぬドッキリ

 

最後は、平安時代最大の説話集『今昔物語集』のなかから一つ。

 

昔々、宮中を警備する武官のなかに、茨田(まんたの)重方という、既婚者でありながら女遊びばかりしている軽薄男がおりました。

 

ある日彼は、参拝に訪れた稲荷神社で華やかな出で立ちの女性に出会います。顔は着物で隠れているけれども、きっと美人に違いない! そう思った重方は、早速すり寄ってあれこれと口説き文句を浴びせはじめます。

 

しかし女性は「行きずりの方の言うことなんて信じられないわ」と受け流し、その場を立ち去ろうとしました。

 

慌てた重方は「そんなつれないことを言わないでくれ。このまま君と一緒にいて、女房のところには帰らないから!」と泣きながら訴えました。

 

その瞬間突然、女性が重方の頬を力いっぱい引っ叩きました。「何するんですか!」驚いて女性の顔をよく見ると、なんと彼女は、変装した重方の妻だったのです。

 

呆然としている重方に向かって「あんた、どうしてそんなに気の許せないことをするの!」と怒りをぶつける妻。重方の必死の弁解も聞かず、「さあ、さっさと惚れた女のところに行きなさいよ!」と言い放ちます。重方は、その場を立ち去るより他ありませんでした。

 

これは重方の失敗そのものより、奥さんの威勢の良さに目がいきますね。

 

平安時代の女性というと「おしとやかなお姫様」のイメージが先行しがちですが、重方の奥さんのような強い女性も少なくなかったようです。

 

 

いかがでしたか? まだまだ紹介したい話がたくさんあるのですが、字数の関係で今回はここまでにさせていただきます。この記事を読んで、少しでも古典文学に親しみを覚えていただければ幸いです(熊井りこ)。

 

Photo by Herculeus