5月15日、電子書籍取次会社の(株)出版デジタル機構が電子書籍応援キャンペーンサイト「“I Love ebook”宣言」をオープンした……という書き出しで、電子書籍業界のニュース記事を書こうと考えていたのですが、編集長より「そもそも取次とは何なのか?」というところから書いてくれと指示が出たので、僭越ながら、取次会社での勤務経験がある私が、そもそも的なところから解説させていただきます。
出版業界というのは、出版社、取次、書店で構成されています。出版社は本を作りますが、本をそのまま書店に送るわけではありません。間に取次を挟みます。
つまり、
- 出版社が本を作る。
- できた本が取次に送られる。
- 取次から全国の書店に本が送られる。
という3ステップを踏んで、本が書店に届くわけです。取次と書店の関係は卸売問屋と小売店の関係と考えるとわかりやすいかもしれません。
「出版社からそのまま書店に送るんじゃだめなのか?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それは結構大変なんですね。
直取引といって、取次を通さずに書店に本を送っている出版社もありますが、全国の書店ひとつひとつとやり取りをするのは大変です。まず、新刊ができたら、ひとつひとつの書店にファックスや電話などで新刊告知をします。注文がきたら、それを1冊なら1冊、10冊なら10冊という単位で分けて各書店に送ることになります。その際の伝票も各書店単位で切る必要があります。
取次を通せば、取次に本を送るだけで、全国1万店以上ある書店に、自動的に部数を割り振って送り届けてくれますし、伝票も少なく済みます。
上記は紙の書籍の流通ですが、電子書籍の場合も基本的に同様で、出版社→取次→電子書店という風に流れて、読者の手元に届くのです。
「“I Love ebook”宣言」は、出版デジタル機構が電子書籍の魅力を広めようと立ちあげたキャンペーン。各界の著名人8名から、電子書籍応援メッセージが寄せられています。
- 勝間和代氏(経済評論家、中央大学ビジネススクール客員教授)
- 神谷明氏(声優)
- 川上量生氏[(株)KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長]
- 川口葉子氏(ライター、喫茶写真家)
- 小久保裕紀氏(NHK解説者、侍ジャパン代表監督)
- ちきりん氏(社会派ブロガー)
- 東雅夫氏(アンソロジスト)
- 古市憲寿氏(社会学者)
電子書籍のメリット、魅力、強み、またオススメの電子書籍が挙げられていますので、いくつか紹介します。
神谷明氏
普段はKindleアプリをiPadに入れて読んでいます。ハードカバーの本を何冊もカバンに入れて移動するというのは実際には不可能ですよね、重すぎます。でも電子書籍なら、何冊でも持ち運べます。画面は明るし、文字も大きくなる。ページをめくるのも簡単で、しおりもつけられる。ツールバーから一気にページをめくることもできますしね。電子書籍の悪いところなんて、思いつきません。(サイト記事より引用)
川上量生氏
以前は、Amazonで本やDVDを買っていたんです。すると毎日のようにAmazonから自宅に“贈り物”が届くわけですよ。で、妻から「どうせ読まないのにこんなに買って!」と怒られていたんです。しかし電子書籍ならそもそも場所を取りませんし、こっそり買えますから、怒られなくなりました。(サイト記事より引用)
ちきりん氏
執筆者の立場から電子書籍が画期的だと思うのは、「ごく少数の人しか欲していないコンテンツでも、出版できるようになったこと」と「真剣な読者だけに読んでもらえる“ネット上の場所”が確保できること」です。(サイト記事より引用)
他にも電子書籍のメリットとして、
- 価格が紙の本より安く、中には無料の本もある。
- 24時間いつでも購入できる。
- 劣化しない。
などがあるかと思います。現在、Kindleの電子書籍であれば、Kindle端末、タブレット、スマートフォン、PCで読むことができます。
また、「Kindle ダイレクト・パブリッシング」「Koboライティングライフ」など個人で簡単に電子書籍を出版できるサービスも増えてきており、今後も電子書籍で出版する作家が増えていくことが予想されます。
今回は、電子書籍を愛するひとりとして、電子書籍応援キャンペーンサイトの紹介記事を書きました。電子書籍を読んだことがないという方、一度、サイトをのぞいてみてはいかがでしょうか?(文・大場諒介)
<“I Love ebook”宣言キャンペーンページ>