本と人を結ぶ書店 大阪・堂島「本は人生のおやつです!!」

本はあくまでおやつ、主食は人であってほしい

 

ユニークな店名にはどのような思いが込められているのだろう。なぜ「おやつ」なのか。実際、お客さんから「本は人生のごはんやろ」と言われることがあるという。確かに本が好きならば、そう考えてしまいそうなものである。

 

しかし、坂上さんはあえて、主食は「人」であってほしいと語る。本は人生に彩りを添えてくれるもの。そういった意味合いを込めて「おやつ」と名付けたのだそう。「本屋さんを始めた理由も、私が読んでよかった本を伝えたいという相手がいるからなので、一番大事なのは人かなって思いますね」と坂上さんは微笑む。

 

本おや名物!「読書カウンセリング」

 

さて、本おやには、冒頭でも紹介した「読書カウンセリング」なる試みがある。始めたきっかけは、いわゆる町の書店の不況だった。新刊書店で働いた経験がある坂上さんは、毎年どれだけの本屋がなくなっているのか、肌で感じていた(※全国の書店数は2000年に2万1654店だったが、2016年は1万2526店に減少している。書店調査会社「アルメディア」による)。

 

そんな中で、どのような本屋なら生き残っていけるだろう。そう考えたとき、今ある本屋は「本を読む人のための本屋」だと気づいた。特に大手書店は「この本が欲しい」という目的があって行く場所である。

 

「今ある本屋さんが『本を読む人のための本屋』なら、私は『読まない人のための本屋』にしよう。だったらこの不況の中でも続けられるかもしれないって思ったんです」と坂上さん。

 

では、「読まない人」はなぜ本を読もうとしないのか。それは、興味があっても何から手をつければ良いのか分からないからではないか。それならば、その人の趣味や嗜好が分かれば、オススメの本を提案できるのでは、と思い読書カウンセリングを始めたという。

 

質問するのは、年齢、性別、学生時代に好きだった科目、趣味、好きなTV番組、好きな俳優など、相手のパーソナリティが分かる内容だ。その中でも、非常に大切な質問が2つあると坂上さん。それは「どんなジャンルの本を読んでみたいか」「読んだときどういう気持ちになりたいか」。

 

そしてカウンセリングの後に、数冊の本を選んで提案する。実際、その中から購入していく方が多いという。もちろん、読書カウンセリングは無料だ。

 

「めっちゃ嬉しいのは、カウンセリングを受けた方が次に来てくださったとき、『この前の本、面白かったです』って言ってくれることです。それで興味を持って、ほかの本屋さんにも行ってもらえたら。『今日は古本屋めぐりをするんです!』までになったらもっと嬉しいですね」と坂上さんは笑顔で語る。

 

全部読みたい!店主の勧めてくれた4冊

 

読書カウンセリングを、筆者も体験してみることにした。まず聞かれたのは「よく本を読みますか」。筆者も本は好きなので、よく読みますと回答する。

 

次に聞かれたのは「いつもどういったジャンルを読みますか」。よく読むのはミステリー系が多いが、この機会に別のジャンルに挑戦してみようと思い、「何気ない日常から飛び出すサクセスストーリーを読みたい」と伝えてみる。すると「とっておきの本があるんですよ」と、坂上さんは以下の4冊を紹介してくださった。

 

「ほんまにオレはアホやろか」(講談社文庫)水木しげる

「ボクの音楽武者修行」(新潮文庫)小澤征爾

「復興の書店」(小学館文庫)稲泉連

「ドスコイ警備保障」(小学館文庫)室積光

 

この4冊は、どれも筆者の知らない本だった。坂上さんは1冊1冊を手に取り、「どういう内容なのか」「作者はどのような人なのか」を丁寧に説明してくれる。映画には予告編があるが、その本版といった感覚だ。

 

説明を聞くうちに、徐々に気持ちが惹かれていき、4冊全て読みたいと思うようになった。今回は、その中でも坂上さんのお気に入りだという、水木しげる著の「ほんまにオレはアホやろか」を購入することにした。

 

筆者は決まったジャンルの本を読むことが多い。たまに違うジャンルの本を読みたいと思っても、どういった本がいいのかわからないことがある。今回、読書カウンセリングを受け、新しいジャンルの本と出会うことができた。普段あまり読書をしない方はもちろん、読書家の方にもぜひ受けていただきたい。きっと本を読むということをより楽しいものにしてくれるだろう。

 

取材を終えて

 

人にとっての主食は人であってほしい。だから、本は人生のおやつ。和菓子も洋菓子も、高級菓子も駄菓子もある。懐かしい菓子も食べたことのない菓子もある。バナナもおやつに入れてしまおう。

 

そんなおやつー本たちは人生に彩りを与え、豊かにしてくれる。本おやには坂上さんのこのような思いが詰まっている。そしてその思いが、お店づくりやさまざまな取り組み・イベントになり、「本」と「人」を結びつけているのだ。

 

今後したいことは何ですか? 最後にそう尋ねると、「死ぬ日までお店に立っていたいです」と、本を愛し、本に人生を捧げた店主は笑った。(取材・文・撮影 長 海秀)

 

店舗情報

住所:大阪市北区堂島2-2-22 堂島永和ビルディング206

営業時間:火~金12~20時、土祝11~18時

定休日:日・月TEL:06-6341-5335

WEBサイト:http://honoya.tumblr.com