日本財団主催「これも学習マンガだ!~世界発見プロジェクト~」の「文学部門」において、『月に吠えらんねえ』(以下:『月吠え』)が選出された。同プロジェクトでは「ブラックジャックによろしく」「キングダム」などの話題作も名を連ねている。
『月吠え』は近代詩歌句の世界観を描いたファンタジーだ。 作品の最大の特徴は、近代詩の代表的な作家や作品をそのまま紹介するのではなく、作家本人や彼らの作品のイメージをキャラクター化する、という斬新な手法で作られている点である。
作品と詩人本人の人物像から、作者の清家雪子さんが受け取ったインスピレーションが表現されており、唯一無二の世界観を味わえるところが魅力である。
学習マンガ選出に伴い、選書委員である毎日新聞デジタルMANTAN WEB編集長の細田尚子さんは、「近代詩歌俳句の解釈や奥深い世界に触れることができ、また二次創作の手法の一つのお手本にもなりえる作品」と推薦コメントをしている。
月吠えファン筆者の心理は喜び9割、寂しさ1割
正直なところ意表を突かれた。筆者は月吠え愛読者の一人であるが、「『月吠え』は内容的に好みが分かれるだろうから薦める人を見極めなければいけない――」という謎のプレッシャーを勝手に抱えていた。
さらに、「できればたくさんの人とこのマンガの凄さについて語り合いたいけど、ひっそり一人で楽しむのも良いかもしれない」と、プレッシャーにネクラな折り合いをつけることにし、そうした楽しみ方も板についてきた矢先だった。先述の発表で「学習マンガ」という絶妙なカテゴライズがなされた。「その手があったか、、」と面食らった。
また、「ついに『月吠え』が日本中に見つかってしまう時がきた」、「内緒で読んでるあの感じも結構好きになってきたのに」とも思った。ちょっぴり歪んだファン心理である。
とはいえ、そんないかれた独占欲は1割くらいで、残りの9割は「『月吠え』が陽の目を浴びたぞーー!!」という心嬉しい気持ちが占めた。『月吠え』愛読者としては、作品をとりまく空気が勢いづくことは、単純に嬉しく、こうした選出によって、より多くの人に手に取ってもらえるチャンスが増えていくのも喜ばしい。