【前編】「ユニクロ潜入取材」の横田増生さんが語る「ブラック企業とジャ-ナリズム」

 

ユニクロ潜入取材の舞台裏

 

同じ頃、雑誌「プレジデント」で、柳井社長は「ユニクロはブラック企業だとの批判がある」という質問を受けて、以下のような発言をしている。

 

「悪口を言っているのは僕と会ったことがない人がほとんど。会社見学をしてもらって、あるいは社員やアルバイトとしてうちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたいですね」

 

朝は必ず「ユニクロ 柳井 正 ファーストリテイリング」とググってから一日が始まるという横田さんが、このニュースを見逃すはずがない。

 

「これを見たとき思いました。あれれ、これは僕への挑戦状かい? それとも、招待状かい?? 決算会見にも出してもらえないし、 働いて欲しいというなら、これは一発潜入したろうかと」

 

 

横田さんは再び週刊文春と手を組み、潜入の準備を整えた。まずは合法的に名前を変え(その手法は秘密)、ユニクロのアルバイト面接を突破。2015年秋から「イオンモール海浜幕張新都心店」「ららぽーと豊洲店」「ビックロ新宿東口店」の計3店舗で、約1年間働いた。

 

ちなみに誤解なきように捕捉すると、取材目的で潜入したのは確かだが、シフトの穴埋めに協力したり、レジ周りのシステムについて提案をしたりと、仕事はきっちりこなしたそうだ。

 

潜入記事の第一回は、2016年12月3日発売の文集に発表された。横田さんはその2日後、通常通り出勤したが、売り場に出る前に店長室に呼ばれ、解雇通知を渡されたという。ここまでが横田さんとユニクロの歴史である。

 

ユニクロの労働環境の実態

 

続いて横田さんは、取材で得た情報をもとに、ユニクロの特徴を語る。

 

「ユニクロの特徴としてまず目につくのは、まず売り上げに対する人件費率の低さです。同社の人件比率は10%前後に収まっている。これに対して、同じ売り上げ規模のヤマト運輸は50%前後と、大きな差が開いています」

 

※ちなみにアパレル業の人権比率の平均は20%程である

「参考:要約版・速報版 TKC経営指標」

 

この人件費率の低さの皺寄せは、①非正規雇用の割合の高さ ②現場への負担、となって表れている。まず①だが、非正規雇用でありながら戦力の中心である学生や主婦が集まらず、人出不足を外国人雇用でカバーしているとのこと。事実、横田さんが働いていたビックロでは、400人中半分ほどが外国の方だったという。

 

「学生が戦力として重要視されるあまり、退職を希望しても、何とか引き留めようとする社員が暴走するケースもありました。『1度入ると4年生になるまで辞められない』など、法的根拠のない発言で学生を困惑させる社員もいましたね」

 

続いて②について横田さんは説明。ユニクロで店舗が使える人件費は、その日の売り上げに準じている。そのため、繁忙期でも売り上げが伸びないと、忙しいのに少ない人数で回さないといけないため、現場は凄惨なことになるのだそう。

 

横田さんが働いていたころ、ユニクロは値上げを敢行し、繁忙期の売り上げを10%程落としている。特に、1年で最も売り上げるはずの感謝祭では、目標額の半分を切った日もあったそうだ。

 

しかし現場には、売上げ計画に基づいて、本部からどんどん商品が送られてくる。その結果、バックヤードは在庫の山となり、現場の作業は増加・煩雑化していく。

 

この事態にユニクロがとった対策は、「売り上げ低下をカバーするためにアルバイトの出勤日数を減らす」だった。結局割を食ったのは、現場で働く数少ない人たちだったという。

 

とはいえ、横田さんがユニクロの取材を始めた頃に比べると、店舗ごとの差はあるものの、同社の労働環境はかなり改善されているということだ。これは横田さんをはじめとするジャーナリズムの功績が確実にあるのだろう。(取材・文 小野たかひろ)

※後半に続く