ユニクロに潜入取材をし、週刊文春に記事を発表したことが話題となったジャーナリストの横田増生さんと、若者の労働問題を中心に取り組むNPO法人POSSEの代表・今野晴貴さんによる講演会「ブラック企業とジャーナリズム~ユニクロ潜入取材から見えてきたもの」が、3月17日に都内で開かれた。
2015年、電通で過労自殺が起きたことは記憶に新しい。それを機に政府は、残業時間に上限(月最大100時間)を設けることを発表。「ブラック企業」と「働き方改革」への社会的関心は急速に高まりつつある。
そんな中で行われた本イベント。会場には就活を控えているのであろう若者を中心に、30名程が集まった。潜入取材の裏話やブラック企業の実態、その見分け方や被害に合わないための対策など、現代社会を生き抜く知恵に溢れたイベントをレポートする。
横田さんとユニクロの歴史
イベントにはまず横田さんが登壇。ユニクロとのこれまでの経緯が語られた。2011年3月に横田さんは、ユニクロの長い付き合いの始まりとなる『ユニクロ帝国の光と影』を上梓した。
同書はユニクロの歴史に始まり、創業者である柳井正さんの生い立ちや経営理念、競合と比較した際のビジネスモデルの優位性など、多角的視点から書かれた一冊だ。しかし、事実関係に虚偽があるとされ、名誉棄損としてユニクロに起訴される。
主な争点は以下の二つ、現場の労働時間だ。
・国内の店長が月間300時間以上の労働をしているかどうか
・中国の工場で深夜2時~3時までの労働が行われているかどうか
最終的には、現場社員の証言などにより事実が認められ、2014年9月、最高裁でユニクロが敗訴した。
両者の確執はここで終わらない。2015年4月、ユニクロが横田さんの中間決算会見への参加を拒否したのだ。会見当日に週刊文春で発表された、「ユニクロ、カンボジアでもブラック労働か」という横田さんの記事が原因だという。
広報に「記事の内容が間違っていましたか?」と質問した横田さんに対し、「間違ってはいないが、柳井から横田氏の出席はご遠慮いただくようにと言われています」という返答だったという。