【第5回】恋は突然やってくる ~夜這いしなくちゃ始まらない~

※前回の記事はコチラ

 

日本が誇る平安文学『源氏物語』からの引用を中心に平安時代の恋愛アレコレを解説する本コラム、今回のテーマは「夜這い」です。

 

「夜這い」とは何とも穏やかでない言葉です。なぜそれを今回のテーマに定めるかというと、平安時代の恋愛ではこの夜這いスタイルが標準だったからなのです。と言っても、貴族の女性の周りにはいつも誰かしらお付きの人間がいます。ですので相手の女性の周囲に誰か手引きをしてくれる存在がなければ夜這いは成功しません。恋愛をうまくいかせるには外堀を埋めることが必須だったのです。

 

ちなみに周囲に正式に認められた結婚の場合も、公認のうえで男性が女性の元へ夜這いすることが結婚を成立させる条件でした。しかし実際は合意のうえの夜這いじゃないこともあったようで…。源氏物語の中でもそのような一方的な夜這いがいくつも描かれています。今回はその一つを紹介したいと思います。

 

さて、前回の本コラムでは光源氏が遅くにもらった20歳以上年下の妻「女三の宮」(「おんなさんのみや」)に対し、「柏木」(「かしわぎ」)という青年が横恋慕する決定的なきっかけとなった垣間見(「かいまみ」)シーンを紹介しました。その後柏木は手引きをしてくれる人を介して恋文を送りますが無視されます。

 

それもそのはず、お相手は人妻、しかも天皇の血を引き並ぶもののない権力者として成長した40代の光源氏の正妻です。ついでに言うと女三の宮も皇女でありますので、通常の恋のお相手として考えられるような相手ではないのです。

 

しかしそれでも諦められない彼はなんと6年間も一方的に思いを募らせます。そしてとうとう彼女の元へ忍んでいきます。そう、夜這いです。しかしいくらこの時代の恋愛の形として夜這いが標準とはいえ、相手女性の身分を考えると常軌を逸していると言わざるを得ません。

 

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