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ゆくゆくは海外でワークショップもしたい。
― 『海色の壜』に収録されている「海酒」が映画化されましたが、自分が創造したものが映画になり、どんな気持ちになりましたか。
本当に楽しみしかありません。映画になるからと言って、原作通りでなくてはいけない、などというこだわりもないです。自分が書いたものが、人にどうインスパイアを与えたかに興味があるので、原作と違った部分があっても「あ、そういう見え方をしたんだな」と。
そういった発見は今後の創作にも役立ち、僕の糧にもなります。それに、映画を見た人が原作を読む、というチャンスにもなるので、ありがたいです。
―良い意味でこだわりを持たないことが、新しい発見につながるのですね
はい。たとえば本の装丁でも同じでして、『海色の壜』のデザインを描いてくれた二人は友人で、非常に僕の世界観に共感してくれているんです。だから、たとえ僕のイメージと違ったものが出てきても、「彼らにはそういう見え方なんだ」と思って、刺激を受けます。それによって自分自身の幅が広がっていく感覚もあって、すごく楽しいです。
― また、同作はカンヌ国際映画祭出品予定とのことですが、海外でもSS講座を開いてみたいと思われますか。
とても思います。講座を開く国によって、バックグラウンドが違いますし、作品内容も変わってくるでしょうね。日本とどういう違いがあるのかも含めて、楽しみです。
― 「SS大賞」を立ち上げられましたが、他のショートショートの公募との違いは何かありますか。
一番大事な点は、編集者がつくということです。これは決定的に違います。「小説家」と「ショートショート作家」は求められる資質が違うので、鍛える筋肉が違い、訓練の仕方も変わってきます。
他の賞は応募して終わりですが、この賞では、SS作家を育てていきたいんです。SSを盛り上げるためにも、仲間やライバル、後輩をどんどん輩出していきたい。そのために、賞を設立しました。