【5/7】『月に吠えらんねえ』清家雪子先生インタビュー 唯一無二の近代詩ワールド舞台裏

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※前回の記事はこちら

 

白さんのイメージ元は「初期のギラついていた時代の白秋」!キャラクター造形エピソード

 

―□街で一番のプレイボーイといえば白さんですが、カッコよく描くために気をつけていることとか、上品な口説き文句とかを書く時に意識していることがあれば教えてください!

 

実はなかなかカッコよく描けなくて(笑)。白さんって、一番言葉遣いが綺麗じゃなきゃいけない人、ですよね。ただそれがなかなか、上手くできないんですけれども。顔もね、一番修正が多いのが白さんなので、ものすごい時間かかって……。直しても直してもヘンな顔になるんですよね。

 

 

―そうだったのですか! 掲載されているのを見る限りはぜんぶイケメンに見えます!

 

そうですか! でもコミックスにするときにもっとイケメンにするために直したりとか(笑)。一番時間かかってます。アシスタントさんにも白さんは不評なんですよ。「時間がかかる」って(笑)。絵はもちろん私が描いているのですが、服のベタとか、時間がかかるので。(服や髪などが)黒いうえに、ちゃんとカッコ良くしなきゃいけないということで。

 

 

―白さんもそうですが、詩の印象からキャラクター化するまでは、すんなりと「こういうふう(なキャラクター)にしよう」と決められましたか?

 

はい、それはもうフィーリングですんなりと。白さんはそれこそ、作品のイメージだけ、なので。もうこの辺は好みなんですけれども。朔太郎さんもそうなんですけれども、特に私は初期(の作品)が好きだっていう。

 

白秋は作風が(時期によって)すごく変わる人なんですけど。初期の、キラキラしている感じが好きで。その、キラキラギラギラしている感じの部分を知ってほしいな、という思いもありますね。「童謡に辿り着くまでの、ギラついてた時代もあるんだぞ~!」っていう部分を。

 

 

ー一般的には「童謡の人」のイメージが強いですよね。

 

はい、それこそ私自身の主イメージが「童謡の人」だったら、白さんもおじさんキャラになっていたんだと思います。あと、初めは登場させるということを想定していなくって、急遽出した人もいるんですよ。

 

 ューヤくんのイメージは「昼寝をしている中原中也」。

 

―そうなんですか!例えばどの辺りのキャラクターでしょうか。

 

まだ単行本にはなっていないのですが「蛍狩」(※前出)というお話でいっぱいキャラが出てくるんですけれども。そこに出てくるキャラクターのモデルとなった俳人などがそうですね。「この人の俳句好きだけど、出すにはマイナーすぎるよなあ」と思っていた人たちでしたが、まあまあ、いっぱいいるから「出しちゃえ~」って(笑)。

 

そういうふうに出しちゃってる人とかは、わりとその場でキャラを作っちゃっている感じです。でも、特に悩まずに、ですね。その辺りの人たちは、本当に「印象だけ」のキャラ、「印象だけ」の結晶体という感じだったりしますね。

 

 

―「宮沢賢治=動物」(※)なども、すんなり決定されたんですか?

 

はい、もう最初っからタヌキでいこうと思いました。中入っているかどうかはともかく(笑)。ぐうるさん(草野心平)も、最初っから蛙で。チエコがロボット、とかも、わりとあとから辻褄を考えましたね。

 

突き詰めていくと「ああ、こういう印象からこういうキャラにしたんだな」と、自分であとから考えていく感じですね。なんか、わりと現実の人に(結果として)似ちゃう時もあるんですよ。

※作中では「車掌さん」。タヌキのキャラクター。

 

 

―たっちゃん(堀辰雄)とか、ミッチー(立原道造)とか。

 

そうですね、それはわりとご本人と作品がフィットしているからだと思うんですよ。

 

 

―そういう場合だとイメージをなかなか動かせなさそうですよね。

 

そうなんです、「ああ、この作品を書く人はこういう容貌だよね」という風に一致しちゃってる時はありますね。ただ、チューヤくんとかは全然違っているんですよね。

 

 

―チューヤくんの場合は(中原中也)本人よりも、詩の印象の方が強く反映されているのでしょうか?

 

それもありますし、中也が草の上で昼寝をしちゃっている写真があるんですよ。シャツ姿で寝っ転がっているという。私にとってはご本人の印象ってその印象がすごく強いんです。あの有名な写真よりも。それが多分ベースになっているかもしれないですね。(取材・文 ささ山もも子)

 

その6に続く