【3/7】『月に吠えらんねえ』清家雪子先生インタビュー 唯一無二の近代詩ワールド舞台裏

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※前回の記事はこちら

 

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犀だけじゃない!気になる「顔無し」キャラクター問題

 

―もう少し作品の反響について伺いたいと思います。男性ファンの方からの反響と女性ファンの方からの反響は何か違いがありますか?

 

そうですね、圧倒的に女性の方が多いのですが、男性の方からお手紙をいただける時もあって。見方は違っていて面白いですね。それこそ特定のキャラに思い入れがあるという感じではなく、なんかこう……少し俯瞰気味で見ているというか。「この表現面白いですね」という感じのちょっと冷静な感じですね。

 

 

―石川近代文学館でのサイン会にも男性ファンの方がいらっしゃって、「犀がカッコイイ」って仰っていました。

 

男性の方何名かいらっしゃってましたね。結構、金沢の方がいらっしゃってくださったみたいです。地元だし、犀星出てるし、ということで。顔がないのに、スミマセン……!(笑)

 

 

―(笑)犀の顔は今後出てくる予定はありますか?

 

でも下半分は出てきましたよね(※)!チョイ出しはしました。

※第20話「恋を恋する人」・4巻収録

 

 

ーそうですね、あの場面で初めて出そう、というのは前々から決めていたのでしょうか?

 

そうですね。でも……どうなるでしょうね~~?(笑) 結構、顔無しさん多いですからね。なにげに。天気屋さんとかもね。

 

 

―そうですよね、言われてみれば! で、出てくるご予定は……?

 

さあ~~どうでしょうね~~?(笑) 。ナツメもね、棗先生が出るのかどうなのかまだわからないですしね。猫だけなのか、どうなのか。

 

悩ましいのは、文学者の説明をどこまで盛り込むか

 

―ストーリーですが、最近ずっと凄い展開が続いていると思うんですけれども……

 

ジェットコースターですよねえ(笑)

 

 

―こういう衝撃的な展開を載せるまでに、編集部との攻防はあるのでしょうか?

 

それはわりと毎回毎回で違っていて、スッと通る時もありますし、「ん?」って時や、直す時もありますね。回毎に違います。

 

 

―ということは、もともとはもっと激しいシーンだった、という部分もあるのでしょうか?

 

そういうところよりは、一番問題になるところは、「説明のしすぎ」という部分だったりします。そこは難しいところで、読者の方がわかるようにある程度文学者の説明を入れなければならない、という時があります。

 

例えば「若くして死んだ」とか。だけどその情報を入れ過ぎちゃうと、文学者本人に寄り過ぎてしまうということもあって。あくまで登場人物たちは作品のイメージのキャラクター化。なので、(文学者の情報を入れ過ぎると)そこから外れていってしまうので。その説明の兼ね合い、ですね。

 

 

―確かにそのバランスは難しそうですね……

 

例えば4巻でいうとアッコさんの辺りは結構悩んで……説明し出すとどこまでも説明説明になっちゃうしなあと思って。実際にあったことをただなぞる、というのは作品(のスタンス)からは外れていくなあと思ったので。でもあんまり説明がなさすぎても、何がなんだかわからない感じになってしまいますし。

 

例えばアッコさんの前に心中してしまった男性が出てきますが、あれが誰か、っていうのも多分わからない人の方が多いと思うんですよね。モデルは有島武郎なんですけれども。それは、与謝野晶子が有島武郎の歌を作っているから、歌からのイメージだったんです。その辺りは難しかったです。ダイレクトに名前出しちゃうのはちょっと違うなあ、と。

 

そういうところの試行錯誤は多いですね。あんまり描写の激しさとかでは(掲載前に指摘を受けることは)無いかもしれないです。

 

 

―ところで文壇で名を挙げた女性として描かれているのは、今のところアッコさんだけですが、小説街や戯曲街の女性が今後登場する可能性はありますでしょうか?

 

どうでしょうね~?(笑)。□(詩歌句)街だと、それこそもっと女性キャラを出したくてもなかなか……。与謝野晶子だけがそびえ立っている、という感じで。それだけすごいということなんですけど。色々出したいところなんですけどね。ただ、小説街を出したとしてもそれほど女性が多くはないのが近代という時代で。そこはもう当時のままで。

 

女性の描き方に関しては、現代の価値観をあまり入れたくないという思いがあったんです。
当時は当時の幸せのあり方もあったはず、って。(取材・文 ささ山もも子)

 

その4に続く

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